1日どれくらい歩くと効果があるの?
政府が人生100年活躍時代と発表してから、一段と健康に対する意識が高まっているように感じます。まだ日が昇る前からあちこちでウォーキングに励む人を多く見かけ、多少の雨でも雨具完全防備で健康な身体を求めて日々努力している姿に感心させられます。1日にどれくらい歩くと身体に良いのか、厚生労働省が発表しています。日本の厚生労働省が推進している「健康日本21」で、歩数目標は男性 9000歩、女性 8500歩としています。約9000歩。これを見てどう思われましたか?歩き過ぎも良くないですし、かといって少な過ぎても効果が得られません。限られた時間で効率よく効果を得るためには、歩行の基本を抑える必要があります。
そもそも歩くってどういうこと?
人間は進化の過程で、四足歩行から二足歩行になったと考えられています。四足歩行といえばお猿さんが想像しやすいですね。
どうして二足歩行になったか。色々な説、理由が関わっているようですが、その中の1つに「省エネを求めた結果」説があります。
四足動物が地球に誕生してから、寒くなったり、雨が降らなくなったり、何度も劣悪な環境に立たされてきました。雨が適度に降っている間は、森林が豊かで、主食の木の実がそこら中に落ちています。ですので、あまり移動しなくとも食料に困ることはありません。
ところが雨が降らなくなり、森林に木の実が不足するようになると、これまでの生活圏では食料を調達することができません。一部の四足歩行の動物達は意を決して食料を求めて遠出するようになります。
しかし、四足歩行は長距離を歩けるような移動方法でありません。皆さんも想像してみてください。手と足を使った四足歩行で近くのコンビニまで行けそうですか?恐らく20m程度で疲れて休んでしまうことでしょう。
四足歩行は非常に燃費の悪い移動手段なのです。ではどうして二足歩行は燃費が良い、つまり省エネなのか。それは重心の上下移動が貢献しています。二足歩行で歩くと意識せずとも頭が上下に移動しますよね?重心が一番高くなるのは片足立ちのとき、一番低くなるのは踵を地面についたとき。通常2〜5cm程度重心が上下に移動しています。
この上下の重心移動が言わばジェットコースターのような働きをしてくれています。ジェットコースターは一番高いところまで電力で持ち上げて、落下する際は重力や重さに任せてすごい速度で進みますよね?この高いところまで自力で持ち上げて、落ちるときの力を前に進むエネルギーに利用するジェットコースターの原理を、二足歩行でも応用しているのです。
なるべく少ない筋力で重心を一番高いところまで持ち上げて、あとは力を入れなくとも落下する勢いで前に進む。言わば歩行とは、いかに少ない力で重心を上方に持ち上げることができるかということになります。その重心移動が効率よく行えるように骨盤が縦に長かったり、ふくらはぎの筋肉が発達していたりしているのです。
この基本に逆らって大股で歩いてみたり、頭が動かないように歩いてみたりするのは、非効率的で適切でない歩行となってしまっている恐れもあるのです。非効率ということは、身体に負担がかかるということ。
例えばここの筋肉を鍛えたいからこうする!のように、その負担がしっかりとした目的があれば良いトレーニングになりますが、そうでない非効率的な動きはどこかに一部に負担が蓄積されてしまいます。例えば関節痛の原因になったり、筋肉が炎症を起こしてしまったり・・・。
よく、運動不足で膝が痛くなってきたからウォーキングを始めた!という方がいらっしゃいますが、そのウォーキングが実は膝の痛みを増悪させてしまっている可能性もあるということです。膝に負担が蓄積すると、膝関節が変形してしまったり、進行すると軟骨がすり減って手術が必要になってしまう可能性もあるのです。ですからまずは身体に無理な負担がかからない【省エネ歩行の習得】から始めてみることをお勧めします。
省エネ歩行のポイント
歩行はいかに少ない力で重心を上方に持ち上げることができるかが大切というお話をしてまいりました。じゃぁ上に跳ねるように歩けば良いのかというと、そういうことではありません。歩くという動きは、例えば手を握る・広げるといった単純な動きではありません。右足をつくと同時に左足で後ろに蹴って、またまた同時に体を左に捻って・・・。なんていちいち考えながら歩く人なんていませんよね?歩行という動きは色々な動きが複雑に、且つ同時進行で行われます。ですから、足はこれだけ持ち上げようとか、ここに力を入れようとか、意識してできるようなものではないのです。その間違った意識が悪いクセをつけてしまい、自然な省エネ歩行を崩してしまうのです。ですから先程から大切だとお話ししている重心の上方移動に関しても、無理して意識する必要はないのです。
結局どうすればいいの?って感じですよね。では気をつけると良いポイントをお教えします。
姿勢
一つ目に気をつけるべきポイントは姿勢です。背中が丸まっているよりは伸びた方が良いのはわかるかと思います。綺麗に見えますしカッコいいですものね。姿勢をよくすると省エネ歩行にもつながります。ですが無理して背中を伸ばそうとすると、余計な力が背中に入ってしまって省エネではなくなってしまいます。意識することはただ一つ。上に引っ張られているな感覚で歩くこと。それもただ上ではなく、後頭部を斜め前上方向からひもで引っ張られているような感覚がベストです。そうすると自然と背中とお腹、両方に力が入り、背筋が伸びて、余分な力が入りづらくなります。そして上に引っ張られている感覚で歩くと、自然に重心が上方移動し、重心の上下移動を利用した省エネ歩行が行えるようになります。また、後頭部を引っ張られているようにする事で、顎が上がるのを防ぐことができ、背中が丸くなるのを軽減してくれます。
歩幅
二つ目に気をつけるべきポイントは歩幅です。歩幅を大きくしてしまうと重心の横移動が大きくなってしまいます。横への移動が過剰になってしまうと、せっかく重心を持ち上げたエネルギーを、前への推進力に効率良く利用することができなくなってしまいます。また、横への過剰な重心移動は膝や足首への負担となり、痛みの出現の引き金となってしまう可能性もあります。ですから歩幅は気持ち小股にすることをお勧めします。そうすることで、横への過剰な重心移動が減少し、重心の上下移動を完全に前への推進力に利用することができ、省エネ歩行につながるのです。
速度
三つ目は速度です。ここまで読んできたことが理解できれていれば自ずとわかるかと思います。そうです。速度を気持ち早めにすると良いでしょう。遅くなってしまうと横へのブレが大きくなり、先程同様省エネ歩行ではなくなってしまいます。身体に無理がない速度、極度に疲れない程度に早歩きすることをお勧めします。
まとめ
四つ足歩行から二足歩行になった経緯についてお話ししました。進化の過程で省エネ歩行が必要となり、、その為に人間の身体は発達してきました。省エネ歩行のポイントは一部分を意識しすぎないこと。一部分を意識してしまうと痛めてしまう可能性があります。気をつけるべきことは、斜め前上からひもで引っ張られている感覚で歩くこと、小股にすること、気持ち早歩きで歩くこと。これらを意識するだけで、自然な効率の良い歩行に近づきます。独自なウォーキングで悪いクセをつけることなく、理想な歩き方を目指しながら健康になれよう頑張りましょう。