今年はいよいよ東京パラリンピック!代表的な障がい者スポーツである車いすバスケットについて知ろう!
障がい者のスポーツと言えば真っ先に思い浮かぶスポーツが車椅子バスケットボール(以下車いすバスケット)ではないでしょうか。
脊髄損傷や下腿切断などの下肢に障がいがあり車椅子に座りながらであっても、上肢を使用することができればスポーツをすることができるので、下肢に障がいのある方でも気軽に楽しむことができるスポーツです。
そんな車いすバスケットも今年東京パラリンピックが開催されることから少しずつですが全国的に広がってきています。
また、障がい者だけでなく健常者も規定はありますが車いすバスケットを行うことができるので、中には障がい者と健常者が一つのチームを作って対戦形式で試合を行うところも増えてきました。
そんな中、車椅子に乗っている方は基本的には身体に障がいを抱えていることが多いので、身体障がいの専門家である理学療法士がチームの一員として関わることも多くなってきています。
そこで、今回は車いすバスケットとはどういったスポーツなのかということと、理学療法士の関わりについて紹介していきたいと思います。
車椅子バスケットボールのルールとは?
まず車いすバスケットにはどういったルールがあるのか簡単に紹介していきます。
~基本的なルール~
車いすバスケットは競技用の車椅子を使用するので、何か特別なルールがあるのではないかと思うかもしれませんが、実は一般のバスケットとほとんどルールは同じです。
1チーム5人で構成され、ゴールの高さも一般のバスケットのゴールの高さと同じです。
一般のゴールの高さと同じということは、車椅子に座っている状態からバスケットボールをシュートしなければならないので、実は一般のバスケットボールより筋力を要求されますし、得点をとることも難しい傾向があります。
そのため、最初は健常者でバスケットの経験がある方であっても車いすバスケットは難しいかもしれません。
試合の時間は1ピリオド10分間を4回行い(40分)、インターバルを入れると約1時間ゲームを行います。
このように基本的なルールはあまり一般のバスケットボールと変わりません。
ただ、車椅子を使用しなければならないので少し特別なルールも存在します。
トラベリング
選手がボールを持ったときに車椅子をこぐ動作は連続2回までで、3回以上はファウルとなり相手チームのスローイングになります。
しかし、その間にドリブルを1回でもすればまた車椅子をこぐことができます。
これも一般的なバスケットボールと同じようなルールですが、歩く歩数ではなく車椅子をこぐ動作でトラベリングが判断されます。
車椅子が転倒した場合
もしゲーム中に車椅子ごと転倒して身体ごと投げ出されても、原則自分で起き上がり車椅子に再度乗らなければなりません。
起き上がることができず、試合が著しく妨げられる場合は審判の判断でゲームを中断できます。
このときにボールを持っている場合は、相手チームのスローインから再度試合が開始されます。
選手の状態によっては一人で車椅子に再度乗ることが難しい場合もありますが、基本的には自分で試合に戻らなければならないので結構シビアなルールと言えます。
選手の状態によるチームの持ち点
選手は一人ひとり障がいの程度により点数があり、コートにいる5人合計で14点以内でなくてはなりません。
1.0~1.5:体幹筋が機能せず、座位バランスをとることができない
2.0~2.5:体幹筋が機能しており、前傾姿勢をとることができる
3.0~3.5:下肢にわずかに筋力があり、前傾姿勢から早く身体を起こすことができる
4.0~4.5:両手を上げて片方向(4.5は両方向)に車椅子を大きく傾けることができる
この5人合計で14点以内であれば健常者も入ることが可能です。
ただ、合計点数の関係上すべて健常者が参加することは事実上不可能です。
多くても5人中2人程度ではないかと思います。
また、5人のうち負傷等で退場になった場合交代選手の持ち点が14点を超えるようだと試合に入ることはできません。
そういった場合は1人少ない4人で試合を続行しなければなりません。
こういった車椅子を使用する関係上特別なルールもありますが、一般のバスケットボールとほとんど同じルールとなっています。
車椅子バスケットの理学療法士の役割とは?
このようなルールが車いすバスケットにはありますが、実は障がい者向けのスポーツとは思えないほど運動量を要求され、車椅子同士がぶつかり合うかなり激しいスポーツです。
では理学療法士はどのように関わっているのかというと、選手たちの身体機能のケアや試合中の怪我の予防のためにチームスタッフの一員として参加していることが多いです。
また、選手として理学療法士がチームに加わっているところもあるようです。
身体的なケアに関しては、車いすバスケットの選手は症状に個人差がありますが主に下肢に運動機能障害が見られます。
そのため、機能しにくい部分(下肢)を動かせる部分(上肢・体幹)で代償しながら運動を行っているので、どうしても動かせる部分に負荷がかかりすぎてしまいます。
実際にインターバルの時や試合後は疲労感が強く残ってしまうことも多いので、理学療法士が筋肉をストレッチしたり、ほぐしたりすることで身体的なケアを行います。
また、怪我の予防のために試合以外の練習のときに個人にあった練習プログラムやウォーミングアップを考案することも重要です。
このように理学療法士による個人にあった練習プログラムやウォーミングアップを行うことで、試合中のパフォーマンスを向上させたり、試合中に身体に負荷がかかりすぎてしまうことを予防したりすることが可能になります。
車いすバスケットに関わる理学療法士の役割は、選手個々の状態にあわせた練習プログラムの考案や、試合中の身体的なケアの実施などが要求される非常に重要な位置づけがあると言えます。
なぜ理学療法士のケアが車いすバスケットに必要なのか
理学療法士の強みは、疾患から考えられる障がいを理解し、それに対してどのように対処すればよいのか医学的な知識をもって考えられることです。
もちろん一般のトレーナーの方も身体の知識は豊富であると思いますが、身体に障がいを抱えている方たちの身体はそれぞれ麻痺があったり、あるいは欠損していたりなど複雑に特徴が見られるので、個人にあった身体ケアが必要になります。
車いすバスケットの選手は身体に障がいを抱えている方が多いので、理学療法士の医療的な観点から見た身体的なケアはとても重要なのです。
まとめ
車いすバスケットは、今年東京パラリンピックが控えていることからさらなる盛り上がりが期待できる障がい者の代表的なスポーツです。
日本においても車いすバスケットが広がってきている中、健常者の方も参加することができるので、障がいの枠を超えて誰しもが関わりをもつことができるスポーツでもあると思います。
そんな中、専門的に適切な身体のケアや怪我の予防を行うことができる理学療法士の関わりも増えてきており、実際にチームのスタッフの一員として選手のケアを行ったり、あるいは自ら選手として参加するなど幅広い活動が期待されています。
この機会に車いすバスケットとはどういったスポーツなのかということや、理学療法士との関わりについて知ってみることはいかがでしょうか。
(参考文献 )
理学療法ジャーナル44巻10号(2010年10月号)
~車いすバスケットにおける理学療法士の関わり~