これってスマホ肘!?「上腕骨内外側上顆炎」の対処法と予防法
現代人の多くは、ほぼ毎日スマホを使用しています。
それどころか通勤中の電車の中、待ち合わせ先での待ち時間などすきま時間があればついスマホを手に取り、ネットを見たりゲームをしてしまうという方も多いと思います。そんな方に急増しているのが「スマホ肘」と呼ばれる肘周囲の痛みです。
今回は、「スマホ肘」について原因や症状、対処法をご説明します。
「スマホ肘」とは
先ほど「スマホ肘」はスマホを使いすぎることによる肘周囲の痛みであると言いましたが、詳しく分類すると「スマホ肘」は二つの疾患に分けられます。
肘外側の痛みは「上腕骨外側上顆炎」
肘の外側で皮膚表面から触れられる骨の部位に痛みがある場合、考えられるのは「上腕骨外側上顆炎」です。「上腕骨外側上顆」とは、肘から肩にかけての上腕骨の下端外側にある丸みを帯びた隆起でそこに手首を反らす筋肉、指を伸ばす筋肉の端が付着しています。
スマホやパソコンのやりすぎでそれらの筋肉を酷使し、疲労させるとその結果として筋肉が付着している部位の骨膜、筋肉の端にある腱や腱鞘が炎症を起こしてしまいます。
肘内側の痛みは「上腕骨内側上顆炎」
肘の内側で皮膚表面から触れられる骨の部位に痛みがある場合、考えられるのは「上腕骨内側上顆炎」です。「上腕骨内側上顆」は上腕骨下端内側にある丸みを帯びた隆起で、手首を曲げる筋肉、手を握る筋肉の端が付着しています。
「上腕骨外側上顆炎」と同様、骨膜の筋肉の付着部、上記筋の腱や腱鞘が炎症を起こした状態です。
なぜ「スマホ肘」になるの?
スマホを長時間使用したからと言ってそんなに筋肉に負担がかかっているようには感じないかもしれません。しかし、スマホ操作の動作にはある特徴があるのです。
最近のスマホは昔使用されていたガラケーに比べると幅が大きい傾向にあります。そうすると、スマホを持つ手は大きく指を開き、さらにその状態をキープした状態で画面を操作するために親指を中心に繰り返し早く動かします。
手を大きく開いた状態でスマホを落とさないように掴むためには、指先の力をかなり必要としています。
また、指の付け根からではなく、指先だけでタップするなどの操作を繰り返すことでまた指先だけに負担をかけてしまいます。そういったスマホならではの動作が毎日繰り返されることで、徐々に筋肉への負担が蓄積して「スマホ肘」へと繋がるのです。
「スマホ肘」の症状と診断方法
一口に「スマホ肘」といっても、肘の痛み全てが当てはまるわけではありません。
ここでは、「スマホ肘」と呼ばれる「上腕骨内外側上顆炎」の症状と診断方法についてご説明します。
運動時痛
まず、ご自身で気づきやすい症状の一つが運動時痛です。肘や手首を動かしたとき、物をつかんで指に力が入った時などに肘の内外に痛みがでます。
圧痛
ふいに肘の内外側をどこかにぶつけてしまった時や、自分で押してみた時などに痛みを感じます。運動時痛だけでは、肘のどこが痛いのかなかなかわかりづらいと思いますので、ご自身で触って確認してみるとわかるかもしれません。
叩打痛
叩打痛とは、ノックするように指などでトントンと内外側上顆を叩いてみたときにでる響くような痛みを言います。叩打痛は骨膜が炎症を起こしているサインですので、これも内外側上顆炎の診断法となります。
安静時痛、熱感、腫れ
この三つのサインは炎症の大きな指標となります。肘の痛みがあってもこれらの徴候がでない場合も多いですが、これらの一つでも当てはまる場合は炎症が比較的強いと考えてよいでしょう。
「スマホ肘」の対処法と予防法
「スマホ肘」を知り、軽度のうちに気付くことができれば整形外科や治療院を受診することなく自分で対処し治療することができます。
ここで、その対処方法と予防法についてご紹介します。
負担の軽減
当たり前の話ではありますが、筋肉の酷使による疲労が原因となって炎症を起こした痛みなので、一番の治療法は患部の負担軽減、つまり「安静」です。
「安静」といっても、全く負担をなくすことは不可能に近いと思いますので、スマホを使用する時間を意識して減らしてみる、カバンやちょっとした物を持つときに痛みのある手をなるべく使わないようにするなどといった気遣いで負担を減らしてあげましょう。
患部のアイシング
「スマホ肘」の根本は、骨膜や腱の炎症なのでその炎症を抑えることが一番の治療になります。
炎症を鎮静化させるのに最も効果的なのが「アイシング」です。氷嚢やビニル袋に入れた氷を直接患部にあてて冷やします。
皮膚が赤くなったり、感覚がマヒしたりするかもしれませんが、15~20分程度は続けるようにしてください。
終わったら一度皮膚の色や感覚、温度が元に戻るまで待ち、再度冷やします。痛くなり始めの急性期や痛みが強いときは特に効果的ですので、是非やってみてください。
なお、シップについても炎症鎮痛効果がありますので、是非使用していただきたいと思いますが、冷シップであっても患部を冷やすという効果はほとんどなく、炎症鎮痛効果のある薬剤が皮膚を通して浸透していくという効果になりますので、シップだけでなく、お風呂上りや休憩中など時間を取れるときは一日数回アイシングをすることをおすすめします。
原因となっている筋肉のストレッチ、マッサージ
酷使して疲労を起こしている筋肉は、伸び縮みしにくい硬い筋肉になっています。その状態でさらに筋肉を使うと、ますます筋肉の付着部を刺激し、炎症をひどくしてしまうことになります。
ですから、原因となっている筋肉をストレッチしたり、マッサージすることで患部への負担を減らし痛みや炎症を抑えることができます。
「外側上顆炎」の場合は、肘の外側から手の甲に向けて走行している筋群の緊張を和らげます。ストレッチは身体の前で手の甲を上にして肘を伸ばし、反対の手で手の甲を押さえて手首を曲げるようにしたら20~30秒静止します。肘外側から手の甲にかけての筋肉に伸張感を感じたらストレッチできている証拠です。
マッサージは上記の筋肉の走行を意識しながら、気持ちのいいポイントを指圧したり、ほぐしたりします。
「内側上顆炎」の場合は、肘の内側から手のひらに向けて走行している筋群の緊張を和らげます。ストレッチは体の前で手のひらを上にして肘を伸ばし、反対の手で手のひらを押さえて手首を反らすようにして20~30秒静止します。
肘内側から手のひらにかけての筋肉に伸張感を感じたらストレッチできています。マッサージは上記の筋肉の走行を意識しながら、気持ちのいいポイントを指圧したり、ほぐしたりします。
いずれの場合も、痛気持ちいい程度が適度な強さとなりますので、ストレッチをして患部である肘が痛い場合は適応ではありません。
その場合は、ストレッチを中止してマッサージのみにしてください。
テーピング
患部の負担を軽減させる方法としてテーピングを使用する方法もあります。テーピングには色々な種類がありますが、「内外側上顆炎」に使用されるテーピングとしては「キネシオテープ」が適していると思います。
「キネシオテープ」は、テーピングの中でも伸張性が非常に高いテーピングであり、痛みの原因となる筋肉の走行に沿って貼ることで筋肉の役割を補助したり、筋肉の無理な動きを少し制御することで保護する役割をします。
テーピング指導のできる治療院やトレーナーに一度やり方を教えてもらうと、自分でも続けて使用しやすいテーピングなので実用的だと言えます。
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サポーター
安静やアイシング、ストレッチ、マッサージを行っても痛みが強く改善が見られない時、痛みがあってもどうしても負担が減らせないときに使用を考えるのがサポーターです。
「外側上顆炎」や「内側上顆炎」に対して使用されるのは、原因となっている筋肉の付け根をサポーターで圧迫することで筋肉の動きが患部の骨膜や腱鞘に伝わらないように遮断するといったものです。簡単には、肘関節よりもやや遠位の部分を一周させて軽くしめつけるようなバンドタイプのサポーターになります。
これで効果を感じる方は、どうしても頼りがちになり、本来の治療をやめてしまう方が多いのですが、痛みを感じないからといって無理をしてしまい、外したときは最初よりも痛くなっているという方も見受けられます。
ですから、サポーターは最後の砦として頭の片隅にいれておくことにして、今までご紹介した治療をこつこつ続けることが大切です。
予防法
痛みが出る前に腕のケアをしようと考えられる方は少ないのが現実ですが、痛みが出てから治すよりも痛みがでないようにケアする方がよっぽど楽であることも事実です。予防法は、基本的には対処法でご説明したストレッチやマッサージが中心となります。
また、スマホやパソコンを使いすぎて、痛みはないけれど少し肘や腕が熱っぽいと感じるときはアイシングをするのもよいでしょう。
おわりに
今回は、「スマホ肘」の症状や治療法、予防法についてご説明しました。この知識を参考にしていただき、うまく対処、予防していただきたいと思います。
その中でも、最も注意していただきたいのはやはりスマホやパソコンの使用時間です。必要以上にスマホやパソコンをしていると手だけでなく、目や脳も疲れてしまいます。
これらの機器によってどんどん便利になっていくのは確かですが、上手く付き合い、ご自身の身体を労わることも忘れないようにしてあげてください。