リハビリ歩行補助具の適応をどう考えるか
日頃から、患者さんに何か杖や歩行器を使用したいけど何が適しているのか判断に迷うことも多いと思います。とりあえず、試してみて、本当は四点杖や歩行器が良かったのにT字杖で歩くことにこだわってしまう患者さんを経験することも度々あるのではないでしょうか。
そこで、今回、歩行補助具の適応をどう考えるかということで、T字杖、歩行器等一般的な歩行補助具の使用に関してどのように検討していくか順を追って提示していきます。
歩行補助具の適応
T字杖
これは使用する頻度も多い歩行補助具ではないでしょうか。先ほど述べたように見た目を気にすることからT字杖で歩くことにこだわってしまう患者さんも少なくないと思います。四点杖で練習していて、T字杖を試したばかりに、その患者さんには適していないT字杖を処方してしまうこともあります。
では、T字杖はどのような条件が整えば適応となるのでしょうか。
- フリーハンド歩行が見守り~自立レベルで安定して歩ける。
- 動作前型での歩行ができる。
- 麻痺などにより片手しか使用できない
大まかには私は①~③のような人に使うことが多いです。T字杖は、フリーハンド歩行ができるけどまだどこか不安定さがあり、T字杖を使うと自立して歩ける。T字杖を使うと疲れにくくなり歩行距離が伸びるなどといった患者さんに使うことが多いです。逆に言えば、フリーハンド歩行ができなければ、T字杖は使いません。それくらい不安定であれば、四点杖や歩行器の使用を検討します。
四点杖
この杖は、患者さんから色々とクレームが来る場合も多いのではないでしょうか。重いとか、外や坂道などの斜面で使いにくいなど言わることが多いと思います。現在は、様々なタイプの四点杖が出ていますが、ここではある程度四点の先ゴムが広い杖のことを指しています。
どのような状態だと四点杖使用を検討するのか。
- 歩行が揃え型での歩行となってしまう。
- 1歩の歩幅が小さい。
- 患側での立脚でしっかり重心を移せない。
私は、四点杖を使用する際に①~③のようなことを考え検討しています。簡単に言うと、1歩1歩が大きく出せず、遊脚側の足が立脚側の足を越えていかず、揃え型になってしまう患者さんです。このような場合は、歩行もゆっくりで推進力が得られないので、T字杖は適応とならず、安定している四点杖を使用する方が患側でも支えやすく、その後の振り出しも安定すると考えられます。
ピックアップ歩行器
歩行器も車輪付きか、持ち上げるタイプにするかで悩むことも多いと思います。基本的には両手が使える方で、整形疾患の患者さんにも多く使われています。持ち挙げておろす時の「ガシャン」という音や坂や段差の部分で使いにくさがあります。ピックアップ歩行器を使用する条件として考えられることは、
- 立位が保てる(両手を安定させるものがあれば立位が保てる)
- 歩行器を持ち上げる間、安定して立位が取れる。
- 両手が使える。
- 段差や坂道が生活環境に少ない。
ピックアップ歩行器を使う条件としては、①~④のようなことができる必要があります。特に、立位を保ち歩行器を持ち上げる能力は必須です。T字杖や四点杖を使う人よりは立位バランス能力は低く、支持物があれば立ってられるくらいの患者さんが適応となります。
車輪付き歩行器(シルバーカーも含む)
車輪付きの歩行器はシルバーカーも含めると様々な種類があります。分かりやすくするため、ここではピ
ックアップ歩行器に車輪がついたタイプのもので検討します。車輪付きということで、歩行器に寄りかか
りすぎると突進するように歩行器と一緒に前に突っ込んでしまう可能性があります。そのため、ピックア
ップ歩行器を使用する人よりも立位バランスは必要です。パーキンソン病等突進様歩行がある人には、あ
まりお勧めはしません。歩行速度をしっかり自分でコントロールできる必要があります。
- 立位が取れる。
- 歩行時に突進様歩行にならない。
- 両手が使える。
ピックアップ歩行器と重なる部分も多いですが、基本的には寄りかかり過ぎず歩ける人が対象です。現在
は、タイヤに制動付きの歩行器や電動でアシストしてくれる歩行器などもあります。
まとめ
T字杖~歩行器と順を追って、適応を検討してきました。歩行補助具の検討時に大切なことは、患者さんの姿勢制御や運動制御がどうなっているのかをよく検討し道具を提供することです。ADL自立を急ぐあまり、道具ありきでの練習になってしまい、結果的に患者さんに合っていない歩行補助具を提供している場合があります。この患者さんは、これくらいの立位バランスだからこの杖を使う等が適切な検討の仕方だと思います。歩行器を卒業し四点杖を練習し、四点杖で歩けたからT字杖で練習するといった杖で難易度付けをするような練習の仕方はお勧めできません。余計な杖の処方につながる可能性もあります。病態に適した歩行補助具の検討をお勧めします。