新人必見!確認したいリハビリサマリーの書き方。
新年度になり、各職場にも新人が入職するなどして、新人教育が進められていることと思います。新人は、普段の臨床を安全に的確にこなすようにならなければいけませんし、カンファレンス資料や退院サマリーなど専門職として患者さんの経過や状態を報告する文書など事務仕事も覚えなければなりません。
文書の書き方などはそれぞれの職場でフォーマットがあって、それを埋めながら教えられ、体系的に文書の書き方を学ぶ機会は少ないのではないでしょうか。
そこで、今回退院時又は転院時のリハビリサマリーの書き方について
- 内容(どんな項目があったら良いか)
- 文書の書き方
の点について確認してみたいと思います。
【どんな項目を記載したら良いか】
・評価日/退院日(転院日)
経過を見ていく上でも、いつの時点での評価なのかを記載する必要があります。例えば、退院後歩けなくなり、サマリーの評価日が1週間前で、歩けていたとあればその原因を考えていく上でも参考になります。
・氏名、年齢、性別
この辺は、当然だと思いますが、カンファレンスやケアマネに送る際など施設によっては氏名や年齢を伏せる場合もあると思います。年齢は、予後や回復具合を推定する上でも必要と考えています。例えば、若い人であれば、身体の予備力も高いため今後も回復する可能性がある。高齢だと、年齢的にもこれからの回復の見込みが少ない、リハビリ内容なども機能的にしっかり関わるより、余生をいかに本人らしく過ごせるかなど考え方の参考になる情報だったりします。
・要介護度
要介護度が分かれば、大まかなADL等生活のイメージもつきやすいです。要支援であれば、自分で歩いてある程度身の回りのことも自分でできそう、要介護4、5であれば寝たきりで、ベッド上でのリハビリが主となるなどです。
・生活歴、趣味、家庭での役割
例えば、職歴がサラリーマンであった人と農業に従事していた人であれば、もともとの知的レベルが異なったり、身体的にも腰が曲がっていたり、腰痛持ちだったりと評価を進めていく上で参考になります。また、活動と参加を促すうえでも趣味や生活歴が分かると何かリハビリプログラムの取っ掛かりになる情報になったりします。例えば、趣味がカラオケで歌うことが好きだったので、コーラスサークルを勧めてみるなどです。
・家族構成
家族構成を把握することは、介助者の有無や金銭管理をしてくれるかなど把握する上で重要です。また、同居家族が日中自宅にいるかなど知っておくことは独居可能かなど把握する上で重要です。
・疾患、障害名
患者さんの現在の状態を作り出しているのが、何の疾患によるものなのか把握することは当然ですが重要です。例えば左手が挙がらないのは、五十肩など運動器の障害で痛みがあって挙がらないのか、脳梗塞などで運動麻痺があって挙がらないのでは、予後予測やアプローチ方法も異なってきます。
・現病歴、既往歴
疾患名、障害名がその要介護状態を作っている主病名であります。それに対し、他の現在治療中の病気
が現病歴で、例えば疾患名は脳梗塞であるが、高血圧、糖尿病も現在内服などで治療中であれば現病歴となります。過去に、盲腸の手術をし現在は治療していないなどであれば既往歴となります。既往歴は、いつ頃治療していたか大体でも良いので時期を記載すると情報の整理に役立ちます。
・主訴
患者さんの主訴を確認することは、とても大切です。例えば、患者さんが「トイレでズボンを挙げられなくて大変だ」と言っているのに、歩行練習ばかり説明もなしに行うのは、患者さんの希望を叶える上で的が外れています。もちろん、歩行を行うことで立位が安定し、トイレ動作に貢献することもあると思います。しかし、それは患者さんへの説明や対話があってこそなので、主訴を聞くとはありますが、セラピストの評価と患者さんの思いをすり合わせることは必要です。
・本人、家族の希望
この部分は、主訴と重なってしまう部分もありますが、目標と言い換えても良いのかもしれません。ご本人、家族と話しながら具体的に生活課題としての希望や目標を聞き出せると良いのではないでしょうか。例えば、ご本人が「ベッドからトイレまで歩けるようになりたい」とか、家族「車椅子に一人で乗れるようになって欲しい」などです。
・全体像
全体像は、サマリーを受け取った人が、一読した際に大まかに患者さんのことを把握することに有用です。例えば、脳梗塞なら左右どちらに麻痺や感覚障害があって、どのくらいのコミュニケーションが取れるのか。ベッド上で介助が必要なのか、見守りがあれば一人で移動できるかなどです。ここでは細かい数値や表現は避け、大まかに患者像を掴めるように工夫します。
・身体機能
1. 体重、身長、BMI
これらは、栄養状態を把握する上でも重要です。特に、自宅復帰となれば、車椅子介助などで簡単に体重など図れない場合もあります。特に退院時点での体重は退院後の生活を把握する上でも重要です。
2. 視力、聴力
セラピストがこれらの機能的評価をするということは少ないですが、大まかにどのくらい見えているのか、聞こえているのかを把握することは重要です。例えば難聴があり、右耳の方が聞こえやすいなどは、円滑にコミュニケーションを図る上でも必要です。
3. コミュニケーション能力
これは、2)と重なる部分もありますが、口頭にて会話が可能なのか、簡単なYes-Noくらいしかやり取りできないのかなどのどの程度の理解力があり、コミュニケーションが取れるのかです。例えば、失語があり、身振り手振りで簡単意思疎通は可能などです。
4. 精神機能・高次脳機能障害
MMSEなど認知機能障害有無、注意力、記憶障害、半側空間無視など記載します。STと協力し評価結果を記載すると良いと思います。
5. 運動機能障害
MMT、BRS-stage、Yearなど筋力や麻痺の程度、パーキンソン病の進行度合いなどです。他にもSIASなど様々な評価項目があると思うのでその施設で使用している評価ツールを用いて、患者さんの運動機能を表現できると良いと思います。
6. 感覚障害
表在、深部感覚、温痛覚、異常感覚などです。どのくらい、感覚障害が続いているのか、どの程度の障害があったのかなど経過を追う上でも記載されていると良いと思います。
7. 疼痛
これも6)と重なる部分もあると思いますが、疼痛部位、程度、頻度など記載があると良いと思います。場合によっては、痛みがなかなかとれず、ある程度痛みのある中で生活しなければならない場合もあると思います。どのような経過をたどって、どう対処していたなど記載あると良いと思います。
8. 可動域制限
基本的には、大関節の大まかな可動域が記載されていると経過を追う上でも確認しやすいです。手関節や足趾など細かい所は状況に応じて必要です。確認したい所としては、既に可動域制限があったのか、最近できたものなのかが確認したい所です。
9. バランス能力
BBS、TUGなど評価バッテリーを使うのも経過や患者さんの状態を知るうえで良いと思います。しかし、まずは、大まかに端座位や立位が保持可能かどうか、介助が必要なのか。立位であれば閉脚や閉眼でも立位が保持できるのか、片脚で何秒立てるのかをしっかり記載することが大切です。そのうえで、評価バッテリーを使うと良いと思います。
10. ADL
始めに寝返り、起き上がり、移乗動作、移動などの基本的動作能力を記載します。次に、FIMやBIに即して日常生活動作能力を記載すると分かりやすいと思います。
【書き方】
サマリーの文書は、まず対象者は誰に提出するものなのかを明確にしましょう。それによって、表現の仕方や説明が変わってきます。リハスタッフ向けであれば、問題ありませんが、ケアマネや介護スタッフ向けだと、分かりやすい表現を用い、リハ的な専門用語は避けるようにしないと相手に伝わり難い文章になってしまいます。
語尾は、「・・・です。」「・・・であった。・・・だった。」などを統一して使い、「・・・していただけますでしょうか」など敬語の使用に注意が必要です。簡潔で分かりやすい文章の記載を心がけましょう。
まとめ
リハサマリーの記載方法について、簡単にまとめました。まずは、文書をもらう相手の気持ちに立てば、分かりやすく、簡潔な文章が書けると思います。また、日頃から文章を簡潔に書くくせやどういう評価が相手は欲しいのかを考えておくことは必要です。簡単ではありましたが、皆さん参考にしてみてください。
(参考文献)
訪問リハビリテーションマニュアル 株式会社gene