疾患概要

後縦靭帯骨化症の概要

後縦靭帯骨化症の概要

後縦靭帯骨化症は、背骨につく後縦靭帯が骨化することによって、手足の麻痺が起こる疾患です。日常生活に大きな影響を与えることもあるので、適切な治療とリハビリテーションと行うことが大切です。 

後縦靭帯と後縦靭帯骨化症 

背骨は、椎骨というブロック状の骨が積み重なってできています。そして、椎骨同士を繋ぐ役割をしているのが靭帯です。椎骨の前側にあるのが「前縦靭帯」、後側にあるのが「後縦靭帯」と呼ばれる靭帯です。幅の広いテープのような形で、背骨の首の部分(頚椎)から腰(腰椎)までを繋いでいます。 

この後縦靭帯に石灰(カルシウム)が沈着して、分厚く硬くなってしまうのが「後縦靭帯骨化症」という疾患です。靭帯が厚くなると脊髄(背骨の中を通る神経)を圧迫するので、様々な神経症状が現れることになります。 

また、後縦靭帯骨化症には男性の方がなりやすく、50歳前後で発症することが多いとされています。治療の難しさから難病指定されており、現在日本に2万3千人程度の患者さんがいると言われています。 

症状 

背骨(脊椎)の中には、脊髄という神経の束が通っています。脊髄は手足の感覚を脳に伝えたり、脳から運動の指令を手足に伝えたりする役割を担っています。後縦靭帯が厚く硬くなると、この脊髄を圧迫してしまいます。その結果、手足の感覚が脳に伝わらなくなる感覚麻痺が起こったり、手足が動かなくなる運動麻痺が起こったりします。具体的には、手足がじんじん痺れて痛む、細かい動きができなくなる、歩きにくくなるといった症状が現れます。 

後縦靭帯の骨化した場所から下で麻痺が起こるので、首(頚椎)で骨化が起これば手足に麻痺が生じ、腰(腰椎)で起これば足だけが麻痺することとなります。また、感覚や運動の麻痺だけではなく、排尿や排便が困難になる場合もあります。 

後縦靭帯骨化症の経過は様々で、骨化があっても症状が出ないこともあります。また、骨化が急速に進むことは少なく、寝たきりになることは希だとされています。 

原因 

後縦靭帯骨化症の詳しい原因は明らかになっていません。ホルモン異常、カルシウム・ビタミンの代謝異常、加齢、ストレスといった様々な要因が関係しているとされています。また、家族内での発症が多いことから、遺伝的な要素も関係していると考えられています。 

治療 

後縦靭帯骨化症では、圧迫された神経を保護することが大切です。たとえば頚椎で骨化が起こった場合には、頚椎カラーを装着して頚椎を安静に保つようにします。また、首を反らせないなど姿勢に注意して生活することが必要になります。 

症状が重度の場合には、手術の適応となります。手術の方法は状態によって異なりますが、骨化した部分を取り出して固定する方法や、脊髄の周りを広げる方法などがあります。 

さらに、麻痺がある状態でも日常生活を円滑に続けていくために、これらの治療と合わせてリハビリテーションを行うことが有効です。 

まとめ 

後縦靭帯骨化症は、後縦靭帯が硬く厚くなることで神経を圧迫し、手足の麻痺が現れる疾患です。症状の程度や骨化の進行の仕方は様々なので、状態に合わせた治療を選択することが必要です。適切な治療を受けるため、気になる症状がある場合には早期に医療機関に相談してください。 

 

(参考文献 )

患者さんのための頚椎後縦靭帯骨化症ガイドブック 診療ガイドラインに基づいて:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,頚椎後縦靱帯骨化症ガイドライン策定委員会,厚生労働省特定疾患対策事業「脊柱靱帯骨化症に関する研究」班.2007. 

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