ピラティスと呼吸の切っても切れない関係って?
ピラティスは、体幹を鍛えながら身体の動きのバランスを整えていくエクササイズです。
テレビや雑誌などでも取り上げられているので、どんなものかなんとなくイメージは知っているという方も多いのではないでしょうか。
ピラティスのエクササイズを行なっていく上で切っても切れないのが呼吸方法です。ピラティスの呼吸は胸式呼吸と言われるものです。
これは息を吸うときに胸も背中も側胸部も含めたみぞおちより上の胴体全体を膨らませるように鼻から吸い込み、口からゆっくり息を吐きながら膨らませた部分をしぼませていくような呼吸法です。
胸式呼吸のメリットは姿勢を安定させるのに必要な腹筋の活動を息を吸うときも吐くときにも維持できる点です。
発声練習などの時によくいわれる腹式呼吸は息を吸うときにおなかを膨らませ、へこませながら吐いていくので吸ったときに腹筋がゆるみ、姿勢を持続的に安定させておくことが難しくなります。
それに対してピラティスでは、胸式呼吸を意識して行ないます。このとき、下腹部を締めるようにして腹筋を常に収縮させながら、横隔膜を使って呼吸していくので、あおむけ、横向き、うつぶせ、座っているとき、立って動くときなど、どんな時でも呼吸を意識的にコントロールすることで、姿勢を安定させながら安全に効果的なエクササイズを行うことが可能となります。
そしてこの胸式呼吸が、自律神経を整えるカギでもあるのです。
ピラティスで胸式呼吸を意識すると、自律神経のはたらきが良くなる!
人間には心臓・腎臓・肝臓・脾臓・胆嚢・小腸・大腸・胃・十二指腸・膀胱・血管・汗腺・子宮・卵巣など、生命維持のためにたくさんの臓器があり、無意識のうちに24時間365日働き続けています。
このような内臓などの機能を無意識のうちに調整してくれるのが、自律神経です。
こうして並べて見てみると、これらの臓器は、自分でどれだけ意識してみても、手足を動かすように働かせたり、動かしたりすることはできませんよね。
つまり、自分で意識して動かせない部分、たとえばごはんを食べた後に胃腸で消化吸収されるのも、寝ている間に心臓が動き続けているのも、暑いときや緊張したときに汗が出るのも、寒いときに鳥肌が立つのも、すべては自律神経が調節していて、生命維持のための身体の様々な活動に関わっているのです。
しかし興味深いことに唯一肺だけは自律神経で支配されている内臓でありながら、自分で意識して動かすこともできる器官です。
もちろん肺が筋肉でできているわけではないので、肺自体を動かすという意味ではありません。
肺は、胴体の上半分のあたり、つまり肋骨と背骨、胸骨などから形成される胸郭のなかに配置されている、風船のような構造です。
胸郭が広がったら肺も膨らみ、胸郭が縮こまれば肺もしぼみます。
呼吸という身体活動も普段は無意識で行なっているので、寝ている間も含め私たちは息を吸ったり吐いたりすることを四六時中意識して過ごしてはいません。
しかし、深呼吸をする時などに、肋骨や背骨の周りの筋肉を意識して動かすことはできますし、肩で大きく息をするとか、息を吸うときにお腹を膨らます、勢いよく息を吐いて咳払いをするなど、呼吸の方法を自分で調節することは可能ですよね。
先ほど述べたように、ピラティスではエクササイズ中ずっと胸式呼吸を続けることで肺を意識的に動かしていきます。
これはつまり、体の動きに合わせて呼吸をコントロールすることで自律神経の活動をも促し、バランス良い状態にすることができるのです。
ストレス社会で戦うあなたにも、自律神経に注目してほしいんです!
ピラティスは、ひとつのエクササイズでありながら、筋肉や骨格を整えるだけのものではありません。
自律神経が活性化して、バランスのいい状態になると、内臓が元気に働くようになったり、免疫力がアップして、カラダ全体が元気になっていきます。
また、ピラティスのエクササイズを通して、姿勢の歪みや猫背が改善してくると、背骨の中を通る脊髄から脳への位置関係も正しく整ってくるので、神経や血管への負担が減り、血液や脳脊髄液の循環がスムーズになることも期待できます。
すると、脊髄や脳への血流量が増えたり、神経シグナルの伝導がスムーズになって、神経からくる痛みやしびれなどの症状が改善したりする、好ましい変化が起こります。
さらに循環が良くなってくると、脳などの神経細胞に酸素がもっといきわたるようになり、ピラティスのエクササイズをしている最中だけでなく、仕事や勉強をしているときにも集中力が高くなりますし、有酸素運動の効果で新陳代謝が高まったり、脳からのセロトニンというホルモンの分泌量が増加して、気分が明るくなり、ストレスに強い心と身体を手に入れることができます。
もちろん、ピラティスでなくても、からだを動かす習慣を身に付けることはとても良いことですが、ピラティスのように、自分の呼吸や姿勢、からだの動きに注意を集中し続けながら行なうエクササイズは、それ自体がいわゆる脳トレの役割も果たします。
日頃の悩みや考えごとから、一時的にでも解放され、エクササイズの間だけでも自分の身体に集中することで無心になるので、その日のエクササイズを終えるころには、心地よいからだの疲れとともに、頭がすっきりして、ストレスを緩和することもできるかもしれません。
日本よりもずっとピラティスが浸透しているアメリカでは筋トレという側面よりも精神面での安定の効果をピラティスの特徴としてあげています。
アメリカでピラティスを指導している人たちは、ピラティスにより生活の質が向上するクライアントが多く見受けられると述べています。
そうしたクライアントの中には、ピラティスを始める前と比べると、うつ気味だったのが落ち着いて、精神状態が非常に安定した、とか、離婚寸前だった夫婦関係が改善した、周りの人に対して優しくできるようになった、優しい顔つきになったと評判になった、などの効果が得られているそうです。
自律神経のバランスが良くなると、カラダの内側から元気がみなぎってくる!
現代社会で生活する上で、良くないとわかっていても、運動不足や睡眠不足、栄養バランスの取れていない食事など、なかなか変えられない生活習慣から抜けられないことも多いのではないでしょうか?
また、日常的にストレスにさらされていることも、自律神経のバランスを崩してしまう原因となります。
定期的にピラティスに取り組むことで、胸式呼吸を意識し、自律神経を整えていくことも大切ですが、日々の生活習慣も自律神経に深く関係します。
できるところから生活習慣も見直しつつ、自律神経に効果的な呼吸方法と、ピラティスも上手に取り入れて、いつも元気な身体と心を保っていきましょう。
そんな日々を過ごすうちに、日常生活を送る上でも冷え性が改善したり、腰痛や肩こりがマシになったり、風邪をひきにくくなったり、といったからだの変化として、また脳に栄養や酸素が行きわたり、ストレスに強くなることで、ちょっとしたトラブルくらいなら動じなくなった自分に気付く日だって、来るかもしれませんね。