パーキンソン病を発症したら?日常生活で工夫できること ~歩行・食事・入浴・更衣~
パーキンソン病と聞くと「進行性の病気だから…」、「どうすることもできないのでは…」などご自身だけでなく、ご家族の不安も大きくなることがあると思います。今回は“ご本人で自立しやすい日常生活の工夫”のポイントについてお伝えしていきます。
歩行
パーキンソン病では、歩行の特徴として「すくみ足」が見られます。足元が不安定になり手前をみてしまいますが、かえって躓きやすくなってしまいます。その時に一歩を振り出す前に、その時の状態に合わせて(1)~(5)の準備を整えて歩き始めると足が出やすくなると言われています。(5)の声かけについては、介助者ではなく“その人自身のタイミング”をとるように注意しましょう。
- 顔を上げて前を見ることを意識して、視線を足元から遠くへそらす。
- 深呼吸をする。
- 足のつま先を上げて“踵からつく”ように一歩を出す。
- 床に目印となる場合は、“線をまたぐ”ように意識する。
- 介助者がいる場合は、「せーの」、「いち・に」などタイミングをとる声かけを行う。
食事
思うように手に力が入らなくなったり、飲み込みにくくなってしまうことがありますが、姿勢や食器、箸、食事の形態(固形、刻み、ペーストなど)のな工夫で食べやすくなることがあります。また、ランチョマットもその方自身だけでなく、家族も雰囲気の似たマットを敷くなど環境を整えることで、ご自身の「疎外感」や「不安」もやわらぎます。
テーブル
滑り止めマットや湿ったタオルを敷く。
食器
置いて使う場合は、安定性が良くすくいやすい物を選ぶ。
(見た目は普通のお皿であるが、すくいやすい様に淵のカーブが深い作りなど。)
スプーンやフォーク、箸などは自助具の種類が豊富であるが、抵抗感を感じやすい。
(その時の状態にもよるが、先だけシリコン加工されたタイプもある。)
座る姿勢
パーキンソン病の方は、立っていても座っていても自然と猫背となってしまう特徴があります。そして、猫背になると食事でむせ(誤嚥:ごえん)やすくなるため安定した姿勢をできるだけとることが大切です。
- 足をしっかり床につける (どうしても車いすの場合は、足を乗せる台から足を床に下ろしましょう。乗せたままであると、飲み込む時に力を入れにくく、猫背の状態で身体が後ろに傾きむせやすくなってしまいます。)
- 出来るだけ身体を起こして座る
入浴
季節の温度差や薬の効果の出る時間帯などで、身体の動きやすさが変わってきます。また、入浴時は裸でもあるため体温調整が日中よりも難しくなってくるため、脱衣場などの温度調整も大切になってきます。
入浴時間
・10分前後が良い。
(長風呂は血圧変動や脱水を起こしやすくなります。絶対ではないため、体力や好みに合わせて少しずつ延ばしていきます。)
浴槽の出入り
- 洗い場と浴槽の段差が大きい時はできるだけ内と外の段差を少なくする。(段差が大きいとバランスを崩しやすくなります。)
- 浴槽、または壁に手すりをつける(浴槽の出入りまたは、浴槽内では浮力で身体が浮きやすくなるため手すりがあると安定しやすくなります。手すりの種類は固定だけでなく着脱可能タイプもあります。)
- 浴槽へは座って入る (浴槽の淵に座るスペースがない場合は、浴室で使用できる台や椅子を使用して手すりを持ちながら片足ずつ入ると安定しやすくなります。もし立って入る方が楽な場合は、手すりを持って、片足ずつ跨ぎます。)
- 浴槽の底に滑り止めマットを敷く (入浴時に浴槽内で足が滑り、バランスを戻せなくなることも可能性としてあります。その際は、マットの衛生管理にも配慮が必要になります。)
更衣
パーキンソン病では、徐々に身体全体がこわばりやすくなるため、指先の細かな動きが難しくなってきます。そのため、靴、靴下、下着など日々身につける衣類などへの工夫が大切です。
靴下
履き口が柔らかく、ふくらはぎや足首のしめつけが殆どない素材。
(ゴムが強いと、着脱に力やバランスを要して疲れてしまうことがあります。)
下着や服
ファスナーが使用できる場合は、金具の大きい物やゴムで加工している物。ボタンが難しい場合は、マジックテープ(ベルクロ)素材などが使用しやすい。
(外からはボタンで、中はチャックになっている作りの上衣もあります。)
靴
合皮やなど軟らかさと固さがある素材。
(皮は馴染むまで固さがあり着脱に努力を要しやすいです。またクッション素材のようなやわらかいすぎる靴は、歩く時に脚に力が入りにくくなりやすいです。例えば、大きい長靴を履いているイメージ)
おわりに
ひと言で「パーキンソン病」と言っても、“今どの段階なのか?”また日により注意する事や工夫することが変わってきます。また、身体だけではなく精神的にも落ち込みやすくなることが多いと言われているため、ご本人だけでなくご家族で抱え込まず、主治医やケアマネージャーに相談するとヒントが見えてきたりするかもしれません。
参考文献:実践リハ処方、老人のリハビリテーション