パーキンソン病の進行のステージをチェック!生活変化とステージ別の運動
パーキンソン病は、ゆっくりと進行していく慢性進行性の遺伝性のない病気です。発症初期は目立った症状は余り見られませんが、パーキンソン病の進行の指標にもなっている「ヤールの重症度分類」を知っていると、何かの拍子に早期発見となるかもしれません。今回は生活の変化とそれに伴う運動をお伝えします。
ヤールの重症度分類とは
「ホーン・ヤール」、または「ホ―エン・ヤール」とも呼ばれますが、どれも同じです。この指標は、パーキンソン病を“進行”と“重症度”で分類したもので、ステージはⅠ~Ⅴの5段階で表されています。数字が大きくなるほど(Ⅴに近いほど)寝たきりに近い状態になっていきます。
ステージⅠ~ステージⅤ
「ステージⅠ」
片側のみの障がいで、身体の機能低下があっても軽い。
手の振え(安静時振戦)や固縮(こわばり)が軽く、日常生活は自立している。
左右どちらからということはありませんが、片側に症状が現れてきます。“片方の手に力が入りにくいかな?”、“歩く時に片足が躓くことが増えたかな?”という場面がありますが、日常生活は自立しているため気付きにくい場面でもあります。
・包丁で固い物が切れない
・雑巾が十分に絞れない
・ズボンのファスナーを上げられない など
<運動>
・立位で行えるパーキンソン体操(全身)
・散歩などで全身の状態を調整
・坂道、階段などの応用歩行の運動(手すりがあると万が一の時に安心)
・立って行うバランス運動(前後左右に身体を動かす、身体を捻じるなど
「ステージⅡ」
両側または体幹(身体を支える軸の部分、腹筋・背筋を使う部分のイメージ)の障がい、バランスの障がいが出現してくる。
日常生活は自立している。
両側ともに動作が難しくなってきます。歩く時に“始めの1歩”が出にくく、すくむことが増えたなど。また、座っている時に身体が片側に傾いていても、姿勢を戻すことが難しくなってきます。
・皿洗いが難しい
・お茶碗を持って箸を使うことが難しい
・歩く時に「せーの」と歩くイメージをつけてリズムをとらないと一歩がでにくい など
<運動>
・立位~座位で行えるパーキンソン体操
・散歩などで全身の状態を調整
・坂道、階段などの応用歩行の運動(手すりを持って行う)
・立って行うバランス運動(前後左右に身体を動かす、身体を捻じるなど(すがれる場所があると安心)
「ステージⅢ」
バランスを崩した時に姿勢を保つことが難しくなってくる。
方向転換や足を閉じて立った時、目を閉じて立った時に身体が不安定となる。
日常生活は自立している。
身体の機能は低下してきますが、動く事の多い仕事は控えるなど、仕事によっては可能な時期です。
・押したり引いたりするドアの開閉でバランスを崩す
・靴下を履いている時に身体が傾いたまま、元に戻すことが難しい
・薄暗い場所で身体がすくんで、なかなか動けない など
<運動>
・横になってできるパーキンソン体操
・歩行を阻害している動きに対する運動(例:突進傾向の歩行→深呼吸をしてリズムをとり一歩出す)
・座った姿勢、四這い位でのバランス運動
・呼吸運動
・姿勢を起こす運動 など
「ステージⅣ」
全体的な症状が進行している状態。
バランスが不安定なだけではなく、身体のこわばりなども強くなってくる。
歩行や立っている姿勢保持などは自立していますが、その他の日常生活では介助を要するようになってきます。(着替えや食事、入浴など生活全般)。活動性が低くなってくるため、廃用性筋委縮(身体を動かすことが減り筋肉が痩せてきてしまう状態)も著明となってきます。
<運動>
・横になってできるパーキンソン体操
・歩行を阻害している動きに対する運動
(例:行く場所を確認して、足を振り出す順番を確認し、リズムをとって歩き始める)
・呼吸運動
・姿勢を起こす運動
・関節が固くならないよう、他動的に動かす など
「ステージⅤ」
全面的な介助を必要とし、寝たきりの状態。
自分自身で寝返りや起き上がりも困難であり、身体全体のこわばりも強くなってきます。全体的に身体も丸まってきてしまうため、呼吸が浅くなったり食事も口から食べることが難しくなってきます。
<運動>
・呼吸運動
・関節が固くならないよう、他動的に動かす
・座った姿勢で他動的にバランスをとる など
おわりに
パーキンソン病は、進行の状況だけではなく薬の効き目によっても症状の現れ方が変わります(多すぎても少なすぎても体調が変化します)ので、変化があった際には主治医の先生に相談することも大切です。また、身体の現状の把握だけではなく、「パーキンソン体操」など身体のこわばりやすい筋肉をほぐすなど日々継続することで、維持しやすくなると思います。
参考文献:実践リハ処方、パーキンソン病はこうすれば変わる!、老人のリハビリテーション