はじめに
骨粗鬆症は骨の量が減って脆くなる疾患です。高齢者に多い疾患で、現在日本には約1,000万人以上の患者さんがいるとされています。
若い人には関係ないように思われる疾患かもしれませんが、骨粗鬆症の予防のためには早期から生活習慣を見直すことが大切です。
症状
骨粗鬆症は、痛みなどの自覚症状がありません。ちょっとしたことで骨折を起こしてから気がつくことも多いです。
骨粗鬆症になると、骨の量(骨量)が低下して骨が弱くなります。転んだり、くしゃみをしただけでも骨折を起こすようになります。
骨折を起こしやすいのは、背骨(脊椎椎体)、手首(橈骨遠位)、腕の付け根(上腕骨近位)、太もも(大腿骨近位)です。気がつかないうちに背骨が体の重みで潰れて骨折して(圧迫骨折)、背中や腰が丸まったり身長が縮んだりしていくこともあります。
骨粗鬆症になるのは女性の方が多く、男女比は1:3程度です。特に閉経後の女性に起こりやすく、70代の女性の2人に1人が骨粗鬆症だとも言われています。
原因
骨粗鬆症には様々な要因が関係しています。骨は変わらないように見えても、日々新たらしく作られることと(骨形成)溶かして壊されること(骨吸収)が繰り返されています。骨形成と骨破壊のバランスが崩れると、骨がスカスカで弱くなってしまいます。
骨粗鬆症は閉経後の女性に多いですが、これは女性ホルモンの減少が影響しています。女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制しています。閉経してエストロゲンの分泌が低下すると、骨の量が減少しやすくなるのです。
また、成長期に無理なダイエットをなどして丈夫な骨が作られていないと、骨粗鬆症になりやすいと言われています。喫煙や過度な飲酒も、骨粗鬆症のリスクになります。
さらに、骨粗鬆症になりやすい疾患としては、関節リウマチ、副甲状腺ホルモン亢進症、糖尿病、慢性腎臓病があります。加えて、ステロイド剤の長期服用によっても、骨粗鬆症になりやすいことが分かっています。
治療
骨粗鬆症の薬物治療に使用するのは、骨吸収を抑制する薬(女性ホルモン製剤、カルトシトニン製剤など)や、骨の形成を促進する薬(活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、カルシウム製剤など)です。
また、薬物治療に加えて、食生活を見直すことが必要です。カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、リン、マグネシウム、タンパク質といった栄養素を摂取して、骨量を増やすことが大切です。
さらに、適度な運動は骨の強度を高めますので、定期的な運動療法も効果的です。
予防
骨粗鬆症の予防のためには、若い頃から適切な食事と運動の習慣をつけておくことが大切です。カルシウム、ビタミンDなど骨の形成に必要な栄養素を十分に摂取することが、強い骨の形成のために効果的です。
また、日光浴によって体内でビタミンDが作られ、カルシウムの吸収を促すことができます。冬場であれば30分~1時間程度は日光浴を浴びることが望まれます。
さらに、骨は力がかかるほど強くなります。ジョギングやウォーキングなどの運動習慣をつけておくことも、骨粗鬆症の予防のために効果的です。
まとめ
骨粗鬆症は骨の量が少なくなって、ちょっとしたことで骨折してしまう疾患です。高齢の女性に多い疾患ですが、若いころの生活習慣も大きく影響します。骨粗鬆症を予防するために、早期から骨を強くする生活を送ることが大切です。
(参考文献 )
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会編(日本骨粗鬆症学会 日本骨代謝学会 骨粗鬆症財団).ライフサイエンス出版.2015
図解作業療法技術ガイド-根拠と臨床経験にもとづいた効果的な実践のすべて:石川斎編.文光堂.2011