整形外科から見た頭痛の原因は?
理学療法を行う中で、問診から頭痛の既往があることが多々あります。
中には頭痛外来に行っても良くならず、NSAIDsでごまかしているという方も…
内科や脳神経外科で解決できない頭痛、実は内服でなく理学療法士が解決できることがあります。
ここでは整形外科分野からの頭痛へのアプローチを紹介していきます。
整形外科分野が扱う頭痛はどんなもの?
まず、頭痛とは大きく分けて2つ、一次性頭痛と二次性頭痛に分類されます。
一次性頭痛とははっきりとした原因のない頭痛で、さらに緊張型頭痛、片頭痛、群発性頭痛に分類されます。
二次性頭痛とは原因のある頭痛で、外傷や感染、脳腫瘍、脳卒中などの原因がはっきりとしている頭痛で中には命にかかわるものもあります。
このうち、整形外科分野で扱う頭痛は一次性頭痛のうち、緊張型頭痛になります。
緊張型頭痛の特徴
国際頭痛分類では、以下のように診断されます。
①頭痛は30分~7日間持続する。
②頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
- 両側性
- 症状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
- 強さは軽度~中等度
- 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
③以下の両方を満たす
- 悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
- 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
④その他の疾患によらない
痛みとしては特に後頭部に締め付けられるような鈍痛を感じることが多く確認されています。
日常生活に支障をきたすようなものではありませんが、痛みが強くなると集中力を欠きQOLの低下を招く恐れがあります。
横になっても改善しない場合もあり、温めてあげると改善することが多いです。
また、緊張型頭痛患者の頸部周囲の筋緊張が高く、圧痛を認める場合が多々あります。
以上のことから、緊張型頭痛のメカニズムとしては後頭部から頸部筋の緊張により筋内の血管へ圧迫ストレスがかかり、血流が低下することで発症すると考えられています。
先行研究により、ボツリヌス菌の筋内投与による筋緊張低下が緊張型頭痛の症状軽減に働いたこともこの仮説を裏付けるものとなっています。
この状態の緊張型頭痛を反復性緊張型頭痛と言います。
しかし、慢性化することで乳酸やピルビン酸が蓄積され、筋内の電解質異常が生じます。
この状態になると中枢神経感作が生じます。中枢神経感作が生じると筋緊張によらず痛みが生じるようになり、内服や温熱治療の効果も薄くなります。
この状態の緊張型頭痛を慢性緊張型頭痛と言います。
緊張型頭痛の治療はどうしたら良いの?
反復性緊張型頭痛の場合
比較的急性症状なため、治療ターゲットは筋になります。
特にデスクワークやPC作業などに多いのですが、座位を長時間保持し画面をのぞき込むことで胸椎の屈曲・頸椎の伸展ストレスが生じます。
この姿勢により胸筋・後頸部筋の短縮、背筋・前頸部筋の伸張が生じ、筋のインバランスが生じます。いわゆる“上位交差症候群”です。
以下、治療方法をまとめます。
即時効果 | 後傾部筋のリラクゼーション
・後傾部筋の緊張を取り除くことで血流を促進し、症状の軽減が得られます。 |
長期効果 | 姿勢の改善
・多くの場合は骨盤前傾不全に伴う胸椎の屈曲が生じます。そのため下位体幹の安定性を向上させることで胸椎‐頸椎のバランス向上につながることが多くあります。 |
自宅でのホームエクササイズとしては
- 肩甲骨の内転促通
- 体幹筋の促通
が有効です。
後傾部のセルフマッサージに加え、キャットドッグやストレッチポール上での上肢運動が有効になることが多々あります。
また、筋緊張に伴い血管内にブラジキニンが増加することも確認されています。
そのため反復性緊張型頭痛ではNSAIDsが有効となります。
慢性緊張型頭痛の場合
慢性緊張型頭痛では筋緊張がターゲットでなく、中枢神経感作に対する治療が必要となります。
もちろん上記に示した姿勢の改善は必要です。
それに加えて、自律神経系へのアプローチが必要になります。
特に中枢神経感作では脊髄後角がわずかな刺激で興奮しやすくなるため、抑制するために脊柱への快刺激が有効になります。
更に自律神経系のうち興奮性を高める交感神経の中枢は上位胸椎~頸椎にあるため、この部分へのリラクゼーション的モビライゼーションは有効な治療手技の一つです。
また、有酸素運動も自律神経系への有効なアプローチとして有効となります。
内服に関しては発痛物質を抑制するNSAIDsよりも下行神経抑制を高めてくれるノイロトロピンやサインバルタ、オピオイド系のトラマールといった内服が有効となります。
NSAIDsと比較して副作用が強いため、注意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
整形外科分野から見た頭痛の特徴と治療法を簡単にまとめてみました。
一番大事なことは一次性頭痛と二次性頭痛をしっかりと見極めることです。
二次性頭痛を見落とすと命の危険があるため、トリアージやしかるべき検査はしっかりと行うべきです。
そのうえで原因がはっきりせず、緊張型頭痛の症状が当てはまる場合に初めて整形外科でのPTに出番となります。
簡単ではありますが参考にしていただければ幸いです。
(参考文献)
日本頭痛学会 慢性頭痛の診療ガイドライン2013
メディックメディア 病気が見えるvol.7 脳・神経