首筋の痛みはどう治す?主な4つの痛みの種類とその対処法
首筋の痛みに悩む方は腰痛や膝痛とともに多く、中高年はもちろん若年者にも多くみられます。
また、そのきっかけは特定の出来事なく日常生活の積み重ねを原因として起こるものや、事故や外傷など明らかな出来事をきっかけとして急に痛みが出現するものなど原因や症状はさまざまです。
そこで今回は首筋の痛みについて症状や原因、またその対処法を詳しくご説明します。
首を構成している組織とは?
まずは、首がどのような構造になっているか解剖学的な面からご説明します。
頸椎
首の基盤となっているのは頸椎です。
頸椎は、首から腰まで並んでいる脊柱の上部7つから成っています。
上から一番目と二番目の頸椎は、環状の環椎、環椎のリングの中心を棒状の骨が貫通している軸椎となり、特殊な形状になっていますが、三番目から七番目の頸椎は似通った形状の椎体が積み木状に並んでいる形になっています。
重なっている積み木がずれないようにそれぞれ上下の頸椎と接している部分があり、そこが椎間関節という頸椎の関節になります。
靭帯
出典:kanpouseitai.blog87.fc2.com
脊柱の前方や後方に積み木の支えとなり頸部の動きを制御している後縦靭帯や黄色靭帯、棘上靭帯、棘間靭帯などさまざまな靭帯があります。
靭帯は筋肉のように伸張性が高くないので、ほとんど伸び縮みしません。
椎間板
それぞれの椎体の間には、クッション材の役割をしている椎間板という組織があります。
クッションの役割を担うため、水分をたくさん含んでおり、脊柱の曲げ伸ばしの運動に応じて一部が潰れて一部が膨らむというように柔軟に形を変えながら頸椎の間をつないでいます。
加齢とともに水分量が減り柔軟性が低下してくることも、後に述べる椎間板ヘルニアの原因に大きく関与しています。
頸髄
脊柱の中(正確には椎体の後方で脊柱管の中)には、頸部から腰部まで大きな神経が走っています。
これを脊髄といい、その中でも頸椎の高さの部分を頸髄といいます。
脊髄から枝分かれした神経は、運動神経や感覚神経として脊椎と脊椎の間から出て手足の末端の運動や感覚を司っており、頸髄からでた神経は主に上肢(肩から手の指先まで)を支配しています。
筋肉
頸部の周囲には頸部を動かしたり、頭を支えたりするためにたくさんの筋肉が付着しています。
大きな筋肉で肩こりなどに大きく関与する僧帽筋、肩甲挙筋をはじめとして斜角筋や胸鎖乳頭筋、頸板状筋などがあります。
主な首筋の痛みの原因
首筋の痛みを伴う原因として主なものをご紹介します。
筋肉のコリ
首筋の痛みの中でも比較的軽度で多くの方が訴える症状として、筋肉のコリがあります。
長時間同姿勢の作業の繰り返しや猫背で首が前に出たような不良姿勢を続けていると、首筋の筋肉は身体の中でも重たい頭部を支えるために過剰に働かなくてはなりません。
そうすることで、首周囲の筋肉が慢性的に硬くなり、重だるさやコリの症状が出現してしまいます。
寝違え
寝違えとは、睡眠中に頸部が無理な姿勢になってしまうことで首の周囲に起こる痛みや動きにくさのことを言います。
起きてから数時間以内に自然に治る場合もあれば、数日以上強い痛みが続いて首が動かせないこともあります。
寝違えによる痛みが起こっている具体的な原因としては、筋肉や靭帯が引きのばされた状態で寝ていたり、頸部の関節が無理な動きになったために炎症を起こしているもの、頸部の関節がある位置で引っ掛かってしまいロックがかかった状態になってしまっているものなどがあります。
炎症が原因となっている場合には、なるべく安静にして炎症が落ち着くのを待つほかありませんが、関節が引っ掛かってしまっている場合には強い痛みを伴わないように注意しながらゆっくり動かしているうちに引っ掛かりが取れて急に動くようになる場合もあります。
頸椎捻挫
頸椎捻挫は、衝突事故や頭部の打撲、突然の首の動きなど急激な出来事によって頸椎の関節を捻挫し、関節、靭帯、周囲の筋肉が炎症を起こすものです。
炎症が強いと安静時痛や患部の熱感、腫脹を伴い、頸部を全く動かせないほどになることもありますが、炎症が落ち着いてくると頸部の運動時痛や重だるさなどに症状が変化してくることが一般的です。
頸椎椎間板ヘルニア
椎間板は、椎体と椎体の間にありクッションの役割をしている組織ですが、椎間板を押しつぶすような動きがあまりにも続いたり、ある部位ばかりに集中すると椎間板の内容物が飛び出してしまい、椎体の後ろにある神経を圧迫してしまうことがあります。
これを、椎間板ヘルニアと言います。
よって頭部や肩の上に重量物を頻繁に載せることのある方、常にうつむいた姿勢で作業をしている方などは頸椎椎間板ヘルニアにならないように負担を減らすなど注意が必要です。
首の痛みとそれに伴う症状
首筋になんらかの問題がある場合、痛みだけでなくそれ以外の症状を伴うことがあります。
痛み以外の症状が治療の手がかりになることもありますので、どんな症状があり、それらがどのようなときに現れるのかご説明します。
熱感、腫脹
頸部のなんらかの組織が炎症を起こしている際にはその周囲が熱感を持ったり、腫れたりすることがあります。
痛みのある部位を皮膚上から軽く触れてみてそのような所見がある場合には、患部の炎症がある程度強いと考えられますので、後で述べる消炎処置を行うことで症状が軽減する可能性が高いです。
神経症状
頸部の痛みに伴って手の痺れや感覚鈍麻、動かしにくさといった症状が出現することがあります。
これは、頸椎椎間板ヘルニアなどで頸部の神経を圧迫していることによる神経症状である可能性があります。
椎間板ヘルニアの場合には、牽引治療など椎間板に対する除圧や周囲の筋肉の緊張緩和、症状が強い場合には、早い段階で外科的手術を行う必要があることもあります。
症状が続く場合や症状が急激に強くなる場合には、早めに整形外科を受診することをおすすめします。
首筋の痛みに対する対処法
首筋の痛みを少しでも軽くするためにご自分でもできる対処法をご紹介します。
消炎処置
寝違えや頸椎捻挫をはじめとして、強い痛みが出始めて数日間は頸部のなんらかの組織が炎症を起こしている可能性が高いです。
炎症をできるだけ早く落ち着かせるためには、まずアイシングを行って下さい。
氷嚢もしくはビニル袋に氷を入れて患部に直接当て、15~20分ほど冷やしては離し、皮膚の温度が常温に戻ったら再び行って下さい。
また、外出や睡眠中でアイシングが行えないときなどは湿布の使用も効果的です。
消炎鎮痛剤が皮膚を通して浸透していき、炎症を落ち着かせます。
ただし、湿布は一瞬ひんやりとしますが冷却の効果はほとんどなく、アイシングの代わりにはなりませんので注意してください。
安静、除圧
炎症を起こしている部位は動かせば動かすほど炎症が強くなってしまいます。
炎症が原因の痛みと考えられる場合には、できるだけ安静を保つようにして負担を減らすようにしましょう。
また、頸部の関節や椎間板は座位や立位で頭を支えているだけで圧迫力がかかり、それが負荷になっています。
頸椎椎間板ヘルニアや頸椎捻挫で関節を傷めている場合には、必要に応じて頸椎コルセットを使用したり、臥位になり頭の重さを取り除くだけでも負担の軽減につながります。
筋緊張緩和
筋肉のコリによる痛みの場合、筋肉の緊張を緩和すると症状が軽減します。
また、寝違えや頸椎捻挫、頸椎椎間板ヘルニアなどで筋肉由来でない痛みの場合でも数日以上首に痛みのある状態で生活していると、自然に周囲の筋肉の緊張が高くなってきてしまい、痛みが元よりも増してしまう場合があります。
そのような場合も筋肉の緊張緩和が症状の軽減につながることが多々あります。
筋肉の緊張を緩和させるためには、いくつか方法があります。
一つ目はマッサージです。強い痛みを伴わないように気をつけながらさすったり優しく指圧してください。
二つ目はストレッチです。目的とする筋肉が伸張される肢位をとってリラックスした状態でゆっくりと呼吸を続けてください。
三つ目は温めることです。ゆっくりとお風呂のお湯につかったり、ホットパックなど心地よい温かさのものを患部にあてます。筋肉の血流がよくなると緊張が緩和しやすくなります。
良肢位の保持
ここでいう良肢位というのは、首が上向きや下向きでないことはもちろん、猫背になって頭部が身体よりも極端に前にでた姿勢でなく、頸椎が本来の脊柱の生理的な安静肢位に近い状態になっていることをさします。
良肢位をとると、頸部の筋肉や関節に最も負担がかからないため筋肉は緊張緩和し、炎症も軽減しやすくなります。
具体的な良肢位とは、左右の肩甲骨を軽く内側に寄せるようにしたうえで、顎を引き、後頭部を背中側の壁につけるような姿勢になります。
炎症が強いときは無理のない程度で意識するようにしてください。
おわりに
今回は、首筋の痛みについてその原因や対処法、痛みに伴う他の症状について詳しく説明しました。
自覚症状だけでは、実際の首の状態を正確に把握することは難しい場合もありますが、病院受診をするべきかどうかの判断材料や自宅で経過を見ている際の過ごし方として少しでも参考になればと思います。
自己で行える対処法で症状が軽快しないときや、症状の悪化が早いときには自宅で経過を観察することが望ましくない場合もありますので、速やかに整形外科を受診するようにしてください。