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運動学習効果を高めるフィードバック方法とは? 

運動学習効果を高めるフィードバック方法とは? 

リハビリで歩行練習をしている時はきれいに歩けているけど、病棟で見かけた時にまた元の歩き方にもどってしまっている、そんな経験をお持ちのセラピストは多いのではないでしょうか。 

このような場合、リハビリでのフィードバックを工夫すると解決することがあります。今回は、どのようにフィードバックを行えば患者さんの運動学習効果を高められるかについてご紹介していきたいと思います。 

フィードバックとは?

フィードバックとは、目標値とパフォーマンスとの差、つまりエラーについての情報のことです。このエラー情報があることで、目標と自分の実際の運動との差がわかり、運動を目標に近づけることができるとされています。つまり運動学習効果を高めるためには、このエラー情報がとても重要になります。 

エラー情報を伝えるフィードバックは大きく分けて2種類あります。この2つの種類の違いを理解し、使い分けることが運動学習効果を高める上で重要となります。まずは、2つの種類のフィードバックについて理解しましょう。 

フィードバックの種類

内在的フィードバック 

内在的フィードバックは対象者が実施した運動そのものから対象者自身が得る感覚情報(視覚、固有感覚、聴覚、触覚、嗅覚など)です。冒頭の歩行練習に例えると、うまく歩けたときの感覚を患者さんが自分で理解して、その感覚を再現しようとするとことで、目標の運動へ近づくといった感じです。 

外在的フィードバック

外在的フィードバックは、外から得られる情報のことで、大きく分けて視覚、聴覚、触覚からのフィードバックがあります。歩行練習に例えると視覚フィードバックは鏡の使用聴覚フィードバックはセラピストによる口頭指示触覚フィードバックはハンドリングにあたります。 

簡単にまとめますと、内在的フィードバックは運動した時に自分が感じられるエラー情報外在的フィードバック外部から与えられるエラー情報となります。2つの種類の違いがわかったところで、どのように臨床に活かせばよいかを考えていきましょう。 

内在的・外在的フィードバックの使い分け 

学習初期は外在的フィードバックが有効 

前述したとおり、内在的フィードバックは運動した時に自分が感じられるエラー情報のことです。つまり自分でエラー情報を検知できないとその運動を修正することは困難ということになります。

例として、大腿骨頸部骨折術後で荷重制限のない患者さんの立位姿勢で考えてみましょう。術側の荷重時痛は消失しているにも関わらず、非術側に偏った立位姿勢をとってしまう。患者さんはその姿勢が左右対称だと思っている状況です。このような場合、患者さんは自ら立位姿勢を修正することは可能でしょうか? 

おそらく難しいと思います。もし自分がセラピストであったなら鏡、体重計を使用してフィードバックされるのではないでしょうか。鏡や体重計は視覚フィードバックにあたります。つまり、外在的フィードバックを与え、修正していくと思います。 

このように学習の初期段階においては、内在的フィードバックでエラー情報を得ることが難しいため、外在的フィードバックを与えることが重要となります。 

学習が進んできたら、内在的フィードバックへ

学習の初期段階においては外在的フィードバックが重要だとお伝えしました。ただし、この外在的フィードバックは実は曲者で、与え続けることで悪い影響をもたらしてしまうことがあります。

例えば、目標荷重量への荷重練習で毎回セラピストがフィードバックをしているとどうなるでしょうか。「間違えていたら、セラピストが教えてくれるから」と患者さんは思ってしまい、外在的フィードバックに依存した状態になります。これを外在的フィードバック産出依存性といいます。この状態になると、対象者は外在的なフィードバックがあるときは運動を修正できるけど、外在的フィードバックが外されると運動を修正することが難しくなります。では、どうしたら外在的フィードバックに依存せず、運動学習を進めていけるでしょうか。 

そこで重要になってくるのが、内在的フィードバックへの移行です。すなわち、対象者が自分で成功した感覚を覚えて、再現していけるようになることです。例えば、先ほどの荷重練習を例にとると、荷重したときに毎回フィードバックするのではなく、2試行に1回フィードバック、5試行に1回フィードバックを与えるといったように、フィードバックの回数を徐々に減らしていくことが重要です。また同時に、目標荷重量に達している時に何を意識していたのか、どんな感覚があったのかを問いかけていくことも、内在的フィードバックを促すためには重要となります。 

 

学習効果を高めるフィードバックの与え方 

臨床で学習効果を高めるフィードバックを行うために必要なこと整理していきましょう。考えるべき項目としては、“何を”、“いつ”、“どのように”フィードバックするかになります。 

“何を”フィードバックするか

患者さんが制御可能なもの”、“修正点は1つ”。この2点が重要となります。 

 

患者さんが制御可能なもの”というのは、患者さんの現在の能力で達成可能かということです。

例えば股関節伸展-10°の可動域制限がある患者さんで、歩行の立脚後期に骨盤後方回旋による代償が生じているとします。ここで、可動域制限が解決されないまま、歩行時の骨盤後方回旋の制御を目標にしてしまうと目標は達成できないことは容易に想像つくと思います。目標が達成されないことでモチベーションの低下にもつながってしまいます。 

 

修正点は1つ”については、学習初期段階においては非常に重要です。

臨床では歩行練習でいくつも修正点やフィードバックしたいことが挙がることが多いかと思います。学習の初期段階は、意識下にてコントロールすることも多く身体的にも、精神的にも疲労しやすいとされています。ここでいくつもの点をフィードバックしてしまうと、疲労によるパフォーマンス低下やモチベーション低下につながる恐れがあります。ですので、学習初期段階は修正点を1つに絞りましょう。 

以上2点において重要なことは、まずはしっかりと評価して、今、最優先すべき課題はなにか、その患者さんにあった課題を設定することとなります。 

“いつ”フィードバックを与えるか 

運動が終了してからフィードバックを与えるまでは2~3秒以上設けた方がよいとされています2)。

歩行練習を例に考えてみましょう。

歩行練習後に患者さんの頭の中では「今、踵から足をつくようにしたら、スムーズに歩けたぞ」と内在的フィードバックが行われています。そこで、運動直後にセラピストが外在的フィードバックを与えてしまうとどうでしょうか。患者さん自身が考えるよりも、早くに外在的フィードバックが与えられるので、患者さん自身が感じたこと(内在的フィードバック)が抑制されてしまいます。そうなると学習の最終目標である外在的フィードバックから内在的フィードバックへの移行が達成されにくくなってしまいます。また、即時的フィードバック(運動後0秒のフィードバック)は、運動の修正が可能であるが、保持テストでは有害であるという報告もあります3)。 

*保持テストとは運動スキルを学習した後に、時間を空けて再度同じ運動スキルのテストを行い、どのくらい運動スキルが保持されているか評価するテストのことです。歩行で例えると、リハビリの歩行練習中に獲得した歩容が翌日まで保持されるか評価することも、保持テストと言えます。 

“どのように”フィードバックするか 

“どのように”フィードバックを与えるかによって、外在的フィードバックへの依存を減らすことができます。

ここでは具体的な方法を2つご紹介します。 

①漸減的フィードバック 

何回の試行に何回フィードバックを与えるかを決めて、徐々に回数を減らしていく方法です。

例えば10回試行した時に10回フィードバックを与えることを100%フィードバックいい、2回に1回与えることを50%フィードバックといいます。前述しましたが、学習が進むに連れて内在的フィードバックに移行する必要があるため、例えば100%→50%→20%といったように外在的フィードバックを減らしていくことが重要です。 

②要約フィードバック 

何回かの試行に1回フィードバックを与え、すべての試行に対してフィードバックを与える方法です。

例えば、5回荷重練習した時に、1回目は目標値に達していたが、2回目と3回目は荷重量が多く、4回目と5回目は少なかったといった感じになります。5試行に1回要約してフィードバックを与えると最も、保持テストで有効であった3)とされています。 

まとめ

学習効果を高めるフィードバックを行うためには、外在的フィードバックから内在的フィードバックへの移行を意識する必要があります。そして、何を外在的フィードバックして与え、いつ内在的フィードバックへ移行していくかを見極めることがセラピストの腕の見せどころだと思います。 

 

(参考文献)

1)理学療法のための筋力トレーニングと運動学習 

2)セラピストのための運動学習ABC 

3)運動学習とパフォーマンス 理論から実践へ 

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