ドクターxで生体肝移植をしていたが、そもそも肝臓ってそんなに大事なのか?
10月から始まった『ドクターX:2話』にて、20代肝臓ガンの男性に生体肝移植をする話がありましたね。シーズン1から変わらず続く、米倉涼子さんが演じる大門未知子の、手術の際の集中力や医学の知識には、いつもわくわくさせられています。
今回2話では、肝臓を移植するかどうかがメインの話でした。そのため、肝臓ってそんなに大事な臓器じゃないのか…?といった目でドラマを見ていたのですが、実際のところはどうなのでしょうか?
生体肝移植とは?
調べてみたところ、手術は健康な人から肝臓の一部を取り出し患者に移植する。また他の手術と違う点は、死者ではなく健康な方から臓器をしてもらうとの事。
またドラマでは、家族からでないと臓器提供が出来ないといった話があったため、色々と制限があるのだと思います。
ただどちらにしろ、肝臓を一部切るという事は、100%肝臓の機能を発揮出来ないのでは?と思うところです。
生体肝移植の経過
上述した疑問がありましたが、後遺症は少なく、1週間〜10日程度で元の状態に戻るようです。
さらに切った内臓も修復されて、元の大きさに戻る事もあるのだとか。
いやはや…医学の進歩というのは本当に素晴らしいものですね。
肝臓の機能
いくら元に戻るとはいえ、ドラマでは「手術をしないと死ぬ」と言われたり、実際意識を失って倒れる場面がありました。
あの場面では一体なにが起こっていたのでしょうか?
まずは肝臓の機能を紐解いてみましょう。
肝臓には様々な機能があり、大まかに言うと
- 物質の代謝
- 解毒
- 胆汁の生成
といった3つの機能があります。
物質の代謝
肝臓には体で作られた栄養などを貯蓄しておく機能があり、必要な時に出し入れができるようになっています。
そのため、この機能が障害されると食事を取っても上手く体に反映されなくなり、食べても食べても太らないといった事が起きてきます。
これだけ聞くとダイエットに良いのでは?と思われる方もいますが、簡単に言えば栄養失調と同じ状態なので、体にとっては不健康な痩せ方になります。
ダイエットで肝臓を取る…なんてダイエット方法がないとは思いますが、そんな話を聞くことがあれば医師に必ず確認を取るようにしてくださいね。
解毒
その名の通り、肝臓は体にとって害のあるものを分解してくれる機能があります。
害のあるものとは、アルコールや薬の成分、食品添加物などです。体の中にあるものだと、アンモニアなどが該当します。
ですので、お酒が好きな方は健康診断で肝臓の値が高い。と言われる事が多いのではないでしょうか?
これはお酒の飲み過ぎにより、肝臓の解毒作用が上手く働かなくなっているためです。
そのまま肝臓を休めずに働かせ続けると、脂肪肝→肝硬変→肝臓ガンといった流れで命の危険が伴ってきます。
昔から言われる“休肝日”にはちゃんと意味がある、という事ですね。
胆汁の生成
この胆汁は、脂肪やたんぱく質を分解しやすくしてくれる作用があります。
栄養は腸で吸収されますが、この胆汁を肝臓から出す事で、腸に吸収されやすくする働きがあります。
という事は、肝臓が正常に働いてくれていれば、理論上どれだけ食べても脂肪がつかない体になれる訳です。もちろん、年齢とともに肝臓の機能は低下してくるため、難しい話ですが…
ただ習慣的に運動を続けている方は、全身の代謝が良いため、肝臓にも充分な血液(血液の中には、栄養や酸素が入っています)を送る事が出来ます。
結果、肝臓の機能が低下しづらく、いつまでもスマートで健康に過ごせる方が多いのは言うまでもありません。
肝臓が悪いと体が黄色くなる
こんな話をどこかで聞いた事があるのではないでしょうか?
これは正解です。
実は黄色くなるのは、胆汁の中に含まれるビリルビンという成分が黄色のためだからです。
肝臓の機能が低下すると、このビリルビンが過剰に体に回ってしまい、肌や白目の部分が黄色っぽく見えるわけです。ちなみにこれを医学的には“黄疸”と言います。
豆知識にどうぞ。
ドラマで男性が倒れたのは何が原因⁈
さて、これまで肝臓の機能をお伝えしてきました。では実際にドラマでは何が起こっていたのでしょう?
ここからは想像になりますが、おそらく“肝性脳症”という合併症が生じていたのだと思います。
ドミノ師の男性は、ステージ3の肝臓ガン。もちろん肝臓の機能は低下しています。
その中で上述したように、肝臓の機能の中で解毒作用が低下すると、アンモニアが分解出来なくなります。
そうすると、分解できないアンモニアが全身を回り、脳に到達。そうすると、脳の機能低下が起こり意識消失を起こします。ここまでの症状を起こしてくると、肝臓の状態はかなり重症。
つまり、これを大門未知子は分析し「このままだったら、あんた死ぬよ」と言ったのではないかと思います。
その他にも、貧血を起こしていた描写もありました。
肝臓には、赤血球を作るために必要な葉酸という成分が肝臓に貯蓄されています(①物質の代謝を参照)
これらが体に送れなくなると、赤血球の数が減少。結果“肝性貧血”といった症状を引き起こします。こういった症状も、病気が悪化している事を示唆する布石だったのではないのかと思うところです。
おわりに
冒頭で肝臓ってそんなに大事な臓器じゃないのか…?と感じていた
自分の記憶を消したいぐらい、肝臓は人間の体にとって不可欠なものでしたね。
ドクターXでは、大門未知子の手術やそれに至るまでの治療プロセスなどを中心に話が展開していきます。
ただ患者さん側の病気や、体の状態をこんな形で分析してみると、また違ったドラマの楽しみ方が見つかりそうですね。
ぜひ次回は、患者さん側の視点でドラマを楽しんでみてください。
(参考文献)
生理学:岡田 隆生、鈴木 敦子
一目でわかる内科学:日野原 重明、新倉 春男
病気がみえる 消化器:医療情報科学研究所