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プーリーはどう使う?リハビリにおける効果と使い方のポイント

プーリーはどう使う?リハビリにおける効果と使い方のポイント

五十肩や六十肩、腱板損傷、肩関節脱臼など肩関節におけるトラブルはたくさんあります。

これらの外傷や疾患によって肩が思うように動かせなくなってしまった場合、リハビリが必要になり、関節の可動域訓練を行います。

そのようなときに病院でよく使用されているのが「プーリー」という器具です。

 

使用する際に、きちんと療法士やトレーナーの方が効果や正しい使い方を説明してくれる場合もありますが、使うように言われてなんとなく使用している方もおられるのではないでしょうか。

どのトレーニング用品やリハビリ器具においても同じですが、目的を理解した上で正しい使い方で使用するのとそうでないのとでは、効果にかなり差が出てきます。

そこで、今回は肩関節のリハビリで使用される「プーリー」ついて効果や正しい使い方、ポイントについて詳しくご説明します。

 

プーリーとは?

「プーリー」とは、上にも述べたように主に肩関節のリハビリに使用される運動器具で、天井やそれに類するものに滑車を取り付け、その滑車に両端に持ち手のついているロープを引っかけたものです。

プーリーの下に椅子を設置して座り、左右の手でそれぞれの持ち手を持ち、片方ずつ交互に引っ張ると反対の手が挙上されるという仕組みです。

 

片方の手を引くだけで反対の手は自動的に挙上されますが、目標はあくまでも自動運動(随意的に自分の筋力で動かす)で元のように腕を上げられるようになることなので、基本的には上げられる方の腕は脱力して動かされるのではなく、自分でも上げようとしながらそれをプーリーが助けるという形になります。  

 

プーリーの効果

プーリーを使用することにより得られる効果をご説明します。  

■正しい肩関節運動の学習

肩関節周囲の筋力が落ちてしまった状態で無理に動かそうとすると、腕の重さが支えきれず、首をすくめて肩甲骨を挙上するような代償動作がでやすくなってしまいます。

そのように崩れた形で可動域訓練を行うと必要な筋肉がうまく鍛えられず、いつまでも正しい関節運動ができるようになりません。

プーリーを使用すると、反対の手を下げることで腕が引っ張り上げられる形になるため、弱くなっている筋力でも正しい上げ方をすることができます。

それを繰り返すことで身体は早く正しい上げ方を思い出し、正しい上げ方をするための筋力も取り戻しやすくなります。

 

■肩関節のストレッチ

五十肩や六十肩で関節拘縮を起こしている場合、通常であれば可動域範囲内の動きしか行うことができませんが、プーリーを使用して腕を引っ張られることで関節のストレッチをすることができます。

その時点での可動域から適度な牽引力をかけることで、肩関節周囲の筋肉や靭帯、関節包が伸張され、少しずつ可動域が拡がってくることが期待できます。

 

■筋肉の促通

自動的に関節を動かそうとしながらも、プーリーの力を借りて他動的にも動きを助けることを「自動介助運動」と言います。

この自動介助運動を行うことで、自動運動では動かすことのできない範囲まで筋肉を動かすことができるので、弱くなったり全く機能しなくなってしまっている筋肉に刺激を与え、機能を促通することができます。

 

プーリーの正しい使い方

プーリーの基本的な使い方をご紹介します。

  1. プーリーの下にある椅子に座り、背筋を伸ばします。床に対してほぼ直角になった背もたれがある場合には、背もたれに背中をぴったりとつけるようにすると身体が安定して途中で姿勢が崩れることを防ぐことができます。
  2. 両手でプーリーの持ち手を左右それぞれ持ちます。手の甲が自分の方を向くのではなく、親指側が手前に来るように持ちます。手の向きによって肩関節の向きも変わり、動かしやすさが変わってくるので注意しましょう。
  3. 片方の手を床に向かって引き、反対の手は引っ張られて上がっていくとともに随意的にも上げるようにします。
  4. 上げる方の肩の可動域いっぱいまで腕が上がったら、今度は上がった方の手でプーリーを引き下げ、反対の腕が上がるようにします。
  5. 左右交互に肩を上げる動きを繰り返します。

続ける時間や回数は状態に合わせて、療法士やトレーナーと相談するようにしてください。

 

プーリーの使い方のポイント

プーリーをより効果的に使うために押さえておきたいポイントをご説明します。  

■正しい姿勢で行う

プーリーを使う際に正しい姿勢で行うことは大前提です。

 

背中が丸まって猫背になった姿勢では、肩甲骨が背中の外側に流れてしまい、上手く肩関節の屈曲動作(手を上げる動作)を行うことができません。

また、力んでしまって首がすくんだようになった姿勢も手を上げる以前に肩甲骨が上方に上がってしまい(肩甲骨の挙上)、正しい肩関節の動きを作り出すことができません。

 

プーリーを動かし始める前には、背筋が伸びているか、肩甲骨が軽く内側に寄せられ胸を張った姿勢になっているか、肩の余分な力が抜けているかなど確認するようにしてください。

動かし始めてからも、特に可動域最終域付近では肩甲骨の挙上などの代償動作がでていないか鏡などで確認しながら行うとより安定して行うことができます。  

■強く痛みのある範囲は動かさない

早く関節可動域を改善したいからと言っても、他動的にも関節が動かない範囲まで無理やり動かすのは危険です。

 

肩関節周囲の筋肉や靭帯、関節包が十分に伸びていない状態で無理な範囲まで可動域を上げようとすると関節を圧迫したり骨と骨がぶつかったりと、かえって関節を傷つけてしまう場合もあります。

医師や理学療法士の指導の下、多少は組織の伸張痛に耐えて伸ばすことがありますが、自身の判断で強い痛みのある範囲まで動かすことはやめましょう。  

■可動域最終域ですこし止める

関節可動域を改善することを目的としてプーリーを使用している場合には、可動域の最終域で数秒間止めてから下ろすと効果的です。

 

最終域で適度な牽引力を加えられることで、筋肉や靭帯、関節包など周囲の組織が伸張され他動可動域の改善につながるだけでなく、最終域で随意的にも上げようと意識することでその角度で必要な筋肉の収縮を促すことができるため、自動可動域の改善にも効果があります。

 

おわりに

今回は、肩関節のリハビリで使用される滑車器具である「プーリー」についてその効果や正しい使い方をご紹介しました。

単純な原理の道具ではありますが、日常生活動作に近い形で実践的な動作練習を反復することができます。 また、使い方のポイントを押さえることで通常の自動や他動のみの可動域訓練と比べ物にならないほど効率的に可動域を獲得することができます。

是非今回の内容を参考に、肩関節機能に問題のある方はプーリ―を使用できる病院やトレーニングジムの利用を検討していただき、より効果の高いリハビリを行っていただければと思います。

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