ライジンの堀口恭司選手の「右前十字靭帯損傷」とはどんな怪我?手術内容やリハビリはどういったことをするの?
先日、ライジンの堀口恭司選手が右前十字靭帯損傷及び内側半月板損傷による手術で年末の試合を欠場すると発表されました。
この前十字靭帯損傷とはどんな怪我なのでしょうか?また、どのような手術を行うのでしょうか?この記事で解説していきたいと思います。
前十字靭帯とは?
前十字靭帯とは膝関節の中にある靭帯で、膝を支える4つの靭帯のうちの一つです。
太ももの骨とすねの骨との間にあり、すねの骨が前にずれることを予防してくれます。急激に力が加わった時や、激しいスポーツでの蓄積ダメージにより、損傷してしまいます。
今回の堀口選手は蓄積ダメージによる損傷であると発表があります。
どうしてダメージが蓄積されやすいの?
堀口選手はプロの総合格闘家で、毎試合激しい体の負担がかかります。
特に格闘技の試合ではパワーポジションというややお尻を落とし、膝を曲げた姿勢でいることが多くなります。
やってみるとわかりますが、この姿勢は大腿四頭筋という太ももの前の筋肉への負担が大きくなります。
この筋肉は膝を伸ばす筋肉であり、強く働くとすねの骨を前にずらす力が働きます。つまり、すねが前にずれることを予防する前十字靭帯と真逆の働きをするわけです。
この大腿四頭筋が強く働き続けることで前十字靭帯への負担が大きくなり、損傷につながりやすくなります。
損傷するとどうなるの?
膝を支えてくれる靭帯なので損傷することで膝の支えが弱くなってしまい、パフォーマンスが悪くなります。
事実、堀口選手も数ヶ月前から膝の動きが悪い違和感を覚えていたそうです。
このレベルのうちであれば筋肉で支えを代償できるのですが、大きな損傷になると筋肉でも支えきることができず、スポーツだけでなく日常生活の中でも膝折れという、急に力が抜けるような現象が見られるようになります。何より痛みを伴います。このようなレベルまで損傷すると、手術が適応となります。
どんな手術をするの?
手術の場合、前十字靭帯再建術という手術を行うことになります。
別の場所から靭帯や筋肉の腱と呼ばれるものを取ってきて、前十字靭帯の代わりに埋め込むという手術です。
よく使われる部位としては
- お皿の下にある膝蓋腱
- 膝の後ろ・内側にある薄筋・半膜様筋の腱
になります。
それぞれ違いがあり、①の場合は手術痕が1つですみます。
さらに、ジョギング開始まで最短2ヶ月・スポーツ復帰まで4ヶ月で比較的復帰まで早いのが特徴です。
しかしデメリットとして、手術後の可動域が狭くなり正座ができなくなるくらいまで硬くなる可能性があります。
また、膝蓋腱の部分に長期的に痛みが出現する可能性が高いことも特徴です。
2の方法では傷が2つついてしまいます。しかし①と比較して予後の可動域は広く、正座も問題なくできる場合が多く、痛みが出てくることもありません。デメリットとしては①と比較して競技復帰まで時間がかかり、およそ倍近くかかってしまうことがあります。
また、再建靭帯の強度も①のものに劣りますので、スポーツ選手は①の手術方法を選択することが多いです。
どちらの手術も一長一短な側面があり、堀口選手もどちらの手術を選択したのかは発表されていません。
10ヶ月かかるとの報道がされていますが、再建靭帯の強度、競技特性を考えれば競技復帰が早く、より強い①の手術を選択したのではないかと思われます。
リハビリはどういったことをするの?
前十字靭帯損傷のリハビリで第一に考えることは、前十字靭帯を切らないことです。
靭帯を手術で繋げても、すぐに強くなるわけではありません。痛みや靭帯の様子を確認しながら、少しずつ負荷量を強くしていきます。時期に合わせたリハビリメニューを行いますので、それぞれの項目ごとに紹介していきます。
筋トレ
重点的に鍛えるべきは大腿四頭筋とハムストリングスです。これらの筋肉は手術の影響で確実に弱くなります。
理想としては、大腿四頭筋の筋力が10、ハムストリングスの筋力が6となる割合になるようにトレーニングしていきます。まずは体重をかけない状態から徐々にスタートし、手術2週目くらいで1/4スクワットや段差・階段など、1ヶ月経つ頃には杖なしでこれらのメニューを行うように進めていきます。
1ヶ月経つ頃にはハーフスクワットくらいまで行い、この時期になればスクワットのような前後の動きだけでなくカニ歩きやサイドステップといった横の動きも取り入れながら体重を乗せたスクワットを行なっていきます。
ここから先は痛みと相談しつつ、2ヶ月ごろにはより実戦に近い動きを取り入れていきます。
可動域練習
手術の後は必ず腫れます。そのため、腫れによる可動域制限や手術の傷口の瘢痕化による可動域制限が生じてしまいます。
これらの可動域制限に対しては痛みのない範囲で行なっていきます。可能な限り早期に90度以上まで曲げることが大きな目標となります。
そのあとの可動域に関しては痛みを見ながら、可能な限り広げていくという形です。
バランス練習
スポーツ復帰において、筋力強化と並行して重要な要素となります。人は目をつぶっていても関節が何度曲がったかある程度はわかります。
これを位置覚と呼び、この位置覚によって膝の状態がどうなっているのかを把握できるのですが、前十字靭帯の手術をするとそれが狂います。
というのも、人体の伸び具合や緊張の仕方も位置覚を把握する上で重要な要素となるためです。
靭帯の再建術を行うことで靭帯の状態を脳に伝える神経系の機能が一度悪くなってしまいますので、バランス練習を行うことでこの神経系の機能を鍛えなければなりません。
多くの場合はハーフスクワットが可能になって時点でバランスボードの上に立つといった練習から始めます。
そこから徐々にレベルを上げていき、バランスボードの上でのジャンプやスクワットなど、バランスが要求されるようなことを行なっていきます。
これらのリハビリを行い、だいたい3〜4ヶ月でランニング、6〜8ヶ月で競技復帰となるパターンが多いですが、格闘技などの負荷が強い競技の場合には10ヶ月以上かけてゆっくりと体づくりを行いことも多いです。
まとめ
前十字靭帯損傷の手術内容やリハビリをまとめました。
どのような手術方法を選択しても競技復帰まで時間がかかり、大変な手術ではありますが過去に同じ怪我から復帰した例はいくらでもあります。来年以降の堀口選手の活躍に期待しましょう!