バナナマン日村の心不全疑い:意外に身近な心不全。その症状や予防法とは!?
かなり前のお話ですが、2013年に急性心不全の疑いにて検査入院したバナナマンの日村 勇紀さん。今もテレビで活躍している所を見ると問題無かったようですが、当時は血圧が220、喘息症状も出ていたそうです。
お笑い芸人の方なので、深刻な話にはなりませんでしたが、状態によっては命の危険もあるのが心不全です。今回は身近でも良く耳にする心不全について、病態や予防方法をお伝えさせて頂きます。
【心不全とは?】
心臓の器質的あるいは機能的障害により、心臓のポンプ機能が低下し、心拍出量の低下や末梢循環不全(主要臓器の酸素需要が満たせない)。肺や対静脈系のうっ血をきたす病態である(引用文献①より引用)と定義されています。
つまり、全身に血液を送る働きのある心臓が上手く働かず、心臓以外にも肺や身体全体に問題を引き起こす状態となります。
【症状】
心臓は左心と右心で機能が違っており、どちらの心不全かによって心不全症状は変わります。
病態としては、左心が悪くなる事で右心も悪くなるため、左心症状→右心症状といった経過を辿る事が多いです。
『左心不全の症状』
左心は肺から戻ってきた血液を身体に送っています(肺循環)
この機能が低下すると、血液を身体に送る事ができなくなり、心臓に血液が溜まります。溜まった血液が一定量を超えると、肺にも血液が溜まってしまいます。そのため心臓と肺の機能低下症状が出現します。
初期には、動いた際の呼吸困難感や動悸。重度になると、安静にしていても呼吸困難感や動悸を認め、意識障害(脳虚血)、乏尿(腎虚血)を起こす危険性が高くなります。
その他の症状として、易疲労感、低血圧、四肢チアノーゼ(手足が紫色になる)、冷感を生じます。
『右心不全の症状』
右心は身体から戻ってきた血液を肺に送っています(体循環)
左心と同じように、心臓に溜まった血液が身体に溜まってしまいます。またこの時点で、左心にはすでに血液が溜まっている事が多いため、左心症状より重い症状が出現します。
症状としては、頸動脈怒張、肝うっ血、胸水、腹水、下腿浮腫などが見られ、身体に血液が溜まる事で体重が増加する事もあります。
※合併症:肺うっ血
肺に血液が溜まった場合、頻呼吸、呼気性喘鳴、ピンク色の泡沫状痰、肺野の水疱音、発作性夜間呼吸困難
上記の症状が出現します。特に夜間帯の呼吸困難感があれば、救急車を呼んでもいいので、すぐに病院に行くことをオススメします。
このように様々な症状が出現し、危険な状態となる病気です。
ただ心臓は直接生命に関与するため、臓器の中で1番守られるように組織が出来ています。そのため、自覚症状がある時点で心臓が弱ってきていると思ってください。
事項で生命維持機能の1つ、心筋リモデリングを紹介します。
【心筋リモデリング】
負荷や障害にを受けた細胞が機能障害を持ったまま修復(再構成)される機能を持っています。
また負荷を受けた心臓は生命を守るために、心臓を大きくしたり、組織を拡げたりして、元々の心機能を保ってくれます。
ただ矛盾点があるのにお気づきでしょうか…?
『機能障害を持ったまま修復される』この部分ですね。
完全には治らない状態で修復されるため、100%使えていた心臓の機能が、90%→80%と負担がかかるにつれて、弱っていきます。
心肥大や心拡大と言われた事がある方は、現時点で心臓に負担がかかっている状態なので、なおさら注意が必要です。
心筋リモデリングが働くため、初期の心不全は症状が少ない場合もあります。
ただこれは治ったのではなく、一時的にこの機能が働き、心臓を無理矢理動かしているだけです。
そのため、心臓に負担のかからない治療と、生活習慣でこれ以上悪化しないように予防していく必要があります。
【予防方法とは?】
①心不全の診断を受けている方
まずは病院での処方薬をきちんと服用し、指導内容を守ることが重要です。
薬は利尿剤(体の水分を尿を増やすことで外に出す)が主で、重度になると心臓の機能自体を補助する薬が処方されます。
また水分を摂り過ぎると体に水が溜まってしまうため、1日/1000mlまでなど水分制限を指導される場合もあります。症状のカテゴリで記載した内容を理解し、症状が出現したら即座に病院を受診する事も大切です。
②心不全の診断を受けていない方
心不全は急に診断がつく事は少なく、元々の生活習慣や病気が悪化する事で発症する事が多いです。その中でも“高血圧”“糖尿病”“喫煙”“飲酒”に気をつける事が心不全を予防する事に繋がります。
・高血圧
まず言われる事は減塩です。1日の摂取量を6g以下にする事が推奨されています。
大さじ一杯でも5g程度ですので、自炊している方はそこまで気にしなくても大丈夫かと思います。
・糖尿病
糖質を抑える◯◯といった様々な商品が出ていますが、これを食べているから大丈夫、といったものはありません。暴飲暴食や過度の間食、野菜や果物の欠如など、食事を見直しバランスの取れた食事を取ることが重要です。
・喫煙
原則、禁煙です。
喫煙すること自体が血管を傷付けてしまうため、長生きしたいのであれば喫煙しないにこした事はありません。
・飲酒
1日缶ビール1本、またはワイン1杯までが望ましいです。こちらに関しても、飲まないにこした事はありません。
【まとめ】
まとめて紹介した心不全。芸能人でもなる身近な病気ですが、とても危険な病気だといった事も知って頂けたのではないでしょうか。
また心不全になる前に“高血圧”“糖尿病”“喫煙”“飲酒”にならないように、普段から気を付ける事が1番の予防となります。
(引用文献)
病気がみえる vol.2 循環器 P38:医療情報科学研究所
(参考文献)
病気がみえる vol.2 循環器:医療情報科学研究所
急性・慢性心不全診療ガイドライン:日本循環器学会