疲労骨折の概要
疲労骨折という言葉を聞いたことがある人は多いはずです。疲労骨折は、通常の骨折とは異なり、小さな力の積み重ねで起きてしまう骨折です。スポーツで起こることの多い骨折なので、適切なトレーニングによって予防することが大切です。
疲労骨折とは
通常の骨折は、大きな力が加わることで起こります。しかし、疲労骨折は、骨に小さな力が繰り返し加わることで、ヒビが入るなどして起こります。放っておくとヒビだけではなく完全に折れることになるので、早期に発見して治療することが必要です。
疲労骨折は、スポーツでの過度なトレーニングで起こりやすい骨折です。疲労骨折が起こる原因には、下記のようなものがあります。
- オーバートレーニング
- 体に合わない練習
- 筋力や柔軟性、技術の不足
- 体に合わないシューズ、トレーニング機器
- 硬すぎる(柔らかすぎる)練習場
疲労骨折は下肢で起こることが多いです。特に起こりやすいのは第二中足骨(足の甲の骨)とされています。他にも、腓骨や脛骨(スネの骨)、肋骨、尺骨(肘先の小指側)などでも発生します。
スポーツによって起こりやすい部位があり、ゴルフでは肋骨、サッカーでは第五中足骨(足の甲の小指側)によく発生します。腰椎分離症も、脊柱(背骨)の疲労骨折の一種です。
また、筋力の発育が未成熟な15~16歳ごろに多く発生することが分かっています。放置しておくとその後の発育に影響を及ぼす可能性もあるので、適切に治療することが大切です。
症状
明らかな外傷がないのに、痛みが続いている場合には疲労骨折の可能性があります。運動した時に痛みが出現して、安静時には痛みが治まるのも特徴です。しかし、ひどくなると安静時にも痛みが続くようになります。
疲労骨折が疑われる場合には、X線(レントゲン)写真で確認します。しかし、完全な骨折ではないので、X線で骨折がわからないことも多くあります。骨折かどうかはっきりしない時には、3~4週間空けて再検査したり、MRIや骨シンチグラフィーを使用して確認することになります。
治療
疲労骨折の治療は、ギプスなどでの固定をせずに行うことが多いです。骨折部分に力がかかる運動を中止して、安静にするようにします。疲労骨折が進んで完全に折れてしまったような場合には、手術が必要になることもあります。
スポーツで疲労骨折が起こった場合には、治療後のトレーニングで再発することも少なくありません。疲労骨折が起こった原因をよく検討して、トレーニング内容を改善して、再発予防をすることが大切です。
まとめ
疲労骨折は、小さな力が繰り返し骨にかかることで起こる骨折です。過度なトレーニングで発生することが多く、放置すると重症化してしまいます。成長期に発生数する場合も多いので、発育に影響を及ぼさないために、早期に治療を行うことが必要です。また、トレーニングの量や内容をよく検討して、疲労骨折を予防することも大切です。
(参考文献 )
標準整形外科学:中村利孝.医学書院.2016
スポーツ損傷シリーズ 疲労骨折:日本整形外科学会