ダウン症候群とは?発達段階における関わりを大切にしよう!
ダウン症候群は、先天的な障がいが見られる小児疾患の中でも染色体異常の代表的な疾患です。
その特徴的な顔貌からダウン症を知っている方も多いと思います。
しかし、ダウン症にはその特徴的な顔貌だけではなく、様々な症状が乳幼児期から成人にかけて見られます。
今回は、ダウン症候群の症状と各時期の発達段階における関わりについて考えていきたいと思います。
ダウン症候群とはどのような疾患なのか
人は卵子が受精するとき、つまり妊娠したときに必ず染色体という組織もいっしょに形成されます。
染色体とはいわば人という遺伝子を形成する最も重要な要素であり、それぞれの組が2つで1組になっており46本23組で形成されています。
これらの染色体の組み合わせがどの組も同じように形成されることで人間という存在が形成されるのですが、ダウン症候群はこの46本23組ある染色体のうち21番目の染色体が1本多く(3本あるのでトリソミーと言います)全部で47本になったことが原因で発症します。
つまり、本来なら全ての染色体も含めて21番目は2本の染色体で成り立つはずなのですが、それが3本あることで特徴的な症状が出現するということですね。
21番目の染色体が3本あるものを『21トリソミー』といい、これがダウン症候群の正式な疾患名になります。
この21トリソミーという染色体が3本ある型がダウン症候群全体の95%程を占めていますが、この他にも様々な型が存在します。
なぜ本来なら1組2本であるはずの染色体が3本になってしまうのか原因は詳しく分かっていませんが、ダウン症候群を発症するリスク因子の一つとして母体の高齢があります。
近年は、出生前の段階である妊娠期間中にダウン症候群であることが分かることが多いので、出産するかどうかを判断することも出来るようになっています。
ダウン症候群の原因とは?
ダウン症候群の原因の一つには、妊娠している母親の年齢が高いということがあります。
ただ、母親の年齢が高いからといって全ての子どもがダウン症候群として出生するわけではなく、高い確率でダウン症候群を始めとした染色体異常の子どもが出生される可能性があるということです。
例えば、20歳の女性が妊娠したときにダウン症候群の子どもが出生する確率は約1667分の1で、25歳の女性が妊娠したときの場合は約1200分の1と言われています。
これが高齢出産となる40歳になると、ダウン症候群の子どもが出生する確率は約100分の1となります。
実に20歳代の女性と比べて12から16倍もの確率でダウン症候群の子どもが出生する確率が高いということになります。
なぜ、高齢になると染色体異常の子どもを出産する確率が高くなるのかというと、女性は高齢になるとその卵子も老化していきます。
この卵子の老化が原因で染色体の機能にダメージが加わり、細胞分裂する能力も弱くなってしまうというわけです。
どのような症状がみられるのか
ではダウン症候群はどのような症状が見られるのか以下にまとめていきたいと思います。
特徴的な顔貌
最も特徴的な外見はその顔貌です。
目が両側とも外側に釣り上がっていて基本的には小さい目をしており、鼻が小さくなっています。
また身長も比較的低く、その特徴的な顔貌と合わせてダウン症候群は外見でほとんど把握することができます。
四肢・体幹筋の低緊張及び関節の柔軟性
ほとんど全てのダウン症候群に見られる身体的な特徴として、四肢・体幹筋の低緊張があります。
また、筋の低緊張状態により全身の各関節も非常に柔らかく、関節の可動域が健常者より大きいことも特徴の一つです。
この筋の低緊張状態は出生直後から見られ、成人になっても生涯継続して見られます。
そのため、重力に抗って動くことが難しいために運動発達が遅れてしまう傾向があります。
言葉の発達の遅れ
言葉の発達の遅れはダウン症候群の全ての子どもに共通して見られますが、個人によってかなりばらつきが見られます。
日常生活における会話程度なら問題なく出来るようになる方もいれば、全く発声が出来ない方や発声はできてもはっきりと言葉を話すことができない方など、様々な言語発達の遅れが見られます。
情緒・精神・社会面での発達の遅れ(発達障害)
この症状も個人差がありますが、ダウン症候群の子どもは基本的に陽気で明るい性格でとても人懐っこい方が多く、自分から積極的に関係を持とうとしてくれます。
しかし、知的に遅れがあったり、こだわりがあったり、衝動的に行動してしまったりなどの症状が見られる方もいます。
こういった発達障害の特性と身体的な低緊張状態と合わせて日常生活全般に介助を要することが多いので、特別支援学校に入学することが多いです。
先天的な心疾患
染色体異常の関係から出生時に多くの割合で『心室中隔欠損症』という心臓の部屋(心室)に出生の段階から穴が開いてしまっている疾患にかかることが多いです。
心室に穴が開いてしまうと血液がうまく全身に循環できないので、低酸素状態になってしまったり、心不全になってしまったりなどの症状が見られるようになります。
そのため、ダウン症候群の子どもは出生後すぐに手術をすることが多いです。
発達のフォローはどのように行われるのか
ダウン症候群の子どもは出生以前から染色体異常が見られることが分かっているので、出生後すぐに心機能の検査などが行われます。
検査の結果により身体症状が落ち着いてくると、発達のフォローのために理学療法士を始めとしたリハビリテーション専門職による運動療法が行われます。
ダウン症候群の子どもは、主に四肢・体幹の低緊張が見られるので、出生直後は特に重力に抗って動くことが困難です。
そのため、自発的な身体運動が不足することで運動発達の遅れが見られるようになってくるため、理学療法士などによる正常発達に沿った運動療法の介入はとても重要です。
このように運動発達の遅れが見られますが、ダウン症候群の子どもは歩行ができないということは少ない傾向があります。
ただ、歩行が出来るようになる時期は個人差があり、おおよそ2歳半から3歳前後に歩けるようになることが多いです。
歩行が出来るようになってくると身体運動発達のフォローの頻度は少なくなりますが、立位・歩行時において、常に筋の低緊張状態が足関節や膝関節・股関節といった関節に影響を及ぼします。
ダウン症候群の子どもは歩き始める時期になると足部の扁平足が問題になりやすく、普段使用する靴に足底板を挿入して足部の骨形成が十分に成されるまで経過を診ます。
歩き始めてからも四肢・体幹の低緊張状態が見られることから、走ったりジャンプしたりといった応用的な抗重力活動の発達が遅れてしまいやすいので、日常生活活動において影響がなくなるまでは運動発達のフォローを継続するようにします。
就学後は学校生活が中心になっていくので、学校卒業後を想定した作業活動を中心にフォローを行っていきます。
まとめ
ダウン症候群は、小児期に見られる染色体異常の中でも代表的な疾患であり、その症状には個人差がありますが、四肢・体幹筋の低緊張状態が生涯に渡って持続することが大きな特徴です。
その他にも言語面や情緒・社会性の障がいなど様々な症状が見られるため、出生直後からの総合的な発達フォローは必要不可欠と言えます。
近年はダウン症候群への社会の認識も深まってきており、就職して日常生活を自立している方も多くなってきています。
ダウン症候群の症状の正しい理解と、各時期における発達面のフォローはより社会への適応を促進するのではないかと思います。
(参考文献)
ダウン症患児の健康管理ガイドライン
こどもの理学療法