ストレス社会でがんばる人の、元気の秘訣って?
現代の日本人の生活はとても忙しく、毎日忙しく働いていると、運動不足や睡眠不足、栄養バランスの取れていない食事など、なんとかしたくてもどうしようもできず、そんな不健康な生活スタイルを続けてしまっている人も多いのではないでしょうか?
バイタリティにあふれて、毎日をいきいきと過ごすことができている人たちがいる一方で、心身ともに疲れが取れないまま、なんとか次の休日まで凌いでいるという方もおられるでしょう。
このままでは良くないと分かってはいても、なかなか変えられない生活習慣、そしてストレスがたまっていくと、気分の浮き沈みや不安、自分に自信が持てない精神状態、そしてうつ病など、心にも身体にも不調をきたすようになってきてしまいます。
実際、ある調査では、会社勤めの方でうつ病にかかる人が、近年増えてきたと言われています。
詳しい理由は述べられていませんが、一人当たりの抱える仕事量が増えたり、勤務時間が以前と比べるとかなり長くなったことに加えて、業務のIT化などで、体を動かす機会が減ってしまったことも大きな原因の一つかもしれません。
ストレスは、心の病気や不安定な気持ちになってしまうだけでなく、頭痛やめまい、胃腸などの消化器症状、さらにリウマチなど、様々な体の症状や疾患の原因にもなっていると言われています。
もちろん、すべてのストレスをなくすことはできませんし、適度なストレスが必要な場面もあるでしょう。
心や身体を壊すことなく、ストレス社会で元気な自分を保つために、今日からでもできる対策のヒントを、いくつかお伝えしていきます。
ストレスのケアに有効なのは、有酸素運動!
人間の体は、精神状態に強く影響を受けています。
これまでの多くの調査から、ストレスを軽減するには、食事でバランスの良い栄養補給をすること、睡眠時間を確保し、心身の疲労回復をうながすこととともに、有酸素運動が効果的だといわれています。
なぜ有酸素運動が良いのかというメカニズムは、まだはっきりとは分かっていませんが、運動を習慣にしている人は、運動をあまりしない人に比べると、ストレスがかかってきた時の対応力があることが、2000年頃の研究で既に述べられています。
そこで、どの程度の頻度や負荷量で運動するのが良いか、いくつかの研究結果から探してみました。
すると分かってきたのは、運動の強度が上がるほど、ストレスが解消の効果も上がるということです。
リラックス効果を得るためには、循環が良くなる程度の軽めの運動をして、体と気持ちをほぐしていくのも良さそうな気がしますが、実際には、運動とストレスの関係は、いわば反比例しているということですね。
具体的な運動強度と頻度の例として、ある研究では、中強度の有酸素運動を週に3回行なっており、1回に最低20分以上のエクササイズを12週間ほど続けると、最も効果が感じられるということが示されていました。
この効果は、運動による即時的なものというだけではありません。
運動を習慣づけて、継続的に有酸素運動を行う効果は、いわゆるストレス発散だけではありません。
将来への不安の解消にも一役買ったり、自信が持てるようになったりと、生活習慣や考え方までが変わることもあるようです。
運動で、こころもからだもデトックス!
イライラしていたり、嫌なことがあったとき、体を動かすと気分がスッキリした経験がある方もおられることでしょう。
2000年頃の別の研究では、有酸素運動、筋力トレーニングのどちらも、緊張や疲労、怒り、無気力などの精神状態に対して、ポジティブな効果が得られることが示されました。
また、これらの精神面への効果は、単発の運動でも即時的な効果を発揮してくれます。
この時の実験では、25分から60分の、中程度から高強度の有酸素運動を実施していました。
さらにまた、こうした運動を定期的に行っている人は、落ち込んだり疲れ切ったりといった、そもそもの気分の浮き沈みが少なくなり、ポジティブな気分を維持しやすいことも分かっています。
落ち込んだ気分が続いていくと、さらにうつ病まで進行してしまうケースも珍しくありません。
一般的に、うつ病患者さんは、あまり活動的に体を動かしていないことが多いと言われています。
もちろん、うつ病になってしまってから、張り切って運動しよう!という気持ちになるのは難しいでしょう。
ただ、うつ病になる手前の段階で、気分の浮き沈みが気になってきたり、疲れが取れなくなってきたりしたら、少しだけ立ち止まって、自分の物事の考え方や、生活習慣の変化を見直してみるのも良さそうです。
うつ病に最も治療効果があるのは、適切な薬物療法と体を動かすことだと言われています。
また、その際に行なう運動として、有酸素運動、筋力トレーニング、どちらも効果的であると推奨されています。
単発で運動するだけでも効果はありますが、運動の効果が最も感じられるのは、17週以上継続した時、というデータもあります。
一度試しに運動してみて、気分がスッキリしたり、疲れが軽くなるような実感があったら、ぜひとも続けてみてくださいね!
もう1つの効果-自信が持てるようになる!
仕事のことや将来のことを考えると、精神的な不安がストレスになることも多々あります。
「リスクに対する恐怖」、「逆境にいることに苦痛や困惑を感じる」など、精神的な不安に対しても、運動による改善効果があるというデータが出されています。
特に効果があるとされているのは、有酸素運動ですが、その効果と運動の強度との関係については、さまざまな意見があり明確にはなっていません。
しかし、不安や自信のなさから、自己評価が低い精神状態にあるとき、運動の効果は絶大です。
カナダのある大学で行われた調査報告で「運動はものごとの捉え方を前向きに楽観的にさせる」ことが発表されました。
運動すると、脳内でセロトニンやエンドルフィンと呼ばれる神経伝達物質が増加し、精神的な安定や幸福感を感じやすくなります。
この効果で、重く感じていた疲れが取れ、気分がスッキリして、ポジティブな気持ちになることができるのです。
また運動を継続していくと、体力がついてタフになれたり、外見的にも引き締まって、スタイルに自信がついてきたりもします。
また、あまり気が乗らない日でも、がんばって運動を継続できると、自分がめげずに努力できたことで、大きな達成感を感じることができます。こうした心と身体の変化がまた、相乗効果で自己評価を高くしていってくれます。
運動の大切さは分かりました。でも、私には時間がないんです…という方へ
忙しい日々を過ごしている方の中には、運動の必要性は分かっていても、週に2、3回なんてとてもじゃないけど無理!と思われる方がおられるでしょう。
前の項目でご紹介したデータは、2000年前後のものがほとんどです。しかし、ここ数年の研究では、週末のみ、少ししか運動できない場合でも、全く運動をしない人より健康で長生きできる確率が高くなるといわれてきています。
また、ごく短時間の高強度トレーニングで、数十分の低〜中強度のトレーニングと同等の効果が得られるというデータも出されています。
何かの持病があって、ドクターストップがかかっている場合は別ですが、特に運動しない方が良い理由がないなら、身体と心の今と将来の健康のために、まずは一回だけでも、運動してみて下さい。
きっと、心地よい疲れとともに、身軽になったような気分を味わっていただけると思います!
(参考文献)
運動を続けている人は、運動をあまりしない人に比べると、ストレスに対しての対応力がある(Hassmen, Koivula & Uutela 2000)
中強度の有酸素運動を週に3回、20分以上で12週間継続すると最も効果が感じられる(Callaghan 2004)
運動すると緊張、疲れ、怒り、気力の低下のような精神状態が改善する。この効果は単発の運動でもえられる。運動を定期的にすると、気分の浮き沈みが減り、精神的に安定する(Lane & Lovejoy 2001; Fox 1999)
うつ病にかかる人は、あまり活動的に体を動かしていないことが多い(Fox 1999)
運動はうつ病に最も効果的な治療である(Dunn et al. 2002)
うつ病には有酸素運動も筋力トレーニングも効果的である(Brosse et al. 2002)
うつ病への運動の効果が最も表れるのは17週以上継続した場合である(Scully et al. 1998)
運動をすると、自己評価が向上する(Calaghan 2004)
「運動はものの見方や捉え方を前向きに楽観的にさせる」という説は、カナダのクイーンズ大学の研究より