腰が曲がらない、痛みで中腰になれない。そんな時の対処法と予防法
ある朝、起きて顔を洗おうとしたら、腰が痛い。
中腰で作業をしていて、背中を伸ばそうとしたら腰が痛い。
靴下を履こうとして背中を丸めると腰が痛くなる。
こういった経験をされた方がこの記事を検索して下さったと思います。
今までは騙し騙し何とかしのいできたけれど、このままでは先が不安だと思います。
そこで今回は、①このような症状の原因②今後の対処法・予防法について解説していきます。
腰を曲げた時の痛みの原因
腰痛には、痛みの出現する動作の違いで2つのタイプに分類することができます。
一つは、腰を前に曲げると痛みが出現するタイプの「前屈障害型」ともう一つが腰を後ろに反らすと痛みが出現するタイプの「後屈障害型」です。
前屈障害型の方の多くは働き盛りの年代であり、仕事における姿勢が腰痛に関わっていることが多く、デスクワーカー、運転手、看護師、介護士などの大半がこのタイプの腰痛を経験しています。
ここでは主に前屈障害型に対する内容を解説していきます。
前屈障害型腰痛
身体を前屈した時に腰痛が発症するタイプです。身体を前屈させる際には、専門的な言葉を使うと腰椎骨盤リズムと言う動きが重要となります。
正常な腰椎骨盤リズムと言うものは、腰椎(腰骨)が40°、股関節(骨盤)が70°曲がります。腰椎と股関節が各々このようなリズムで運動することができれば、腰への負担は限りなくゼロに近いです。しかし、この腰椎骨盤リズムがひとたび崩れると腰痛の原因となってしまいます。
例えば、股関節の動きが制限されてしまっている状況下では、前屈の動きをカバーするために腰椎が過度に曲がり負担がかかってしまいます。一方、腰椎の動きが制限されてしまっている場合は、股関節が前屈の動きをカバーするために股関節が過度に曲がり負担がかかってしまいます。
前屈障害型腰痛の方は、この腰痛骨盤リズムが破綻してしまっている場合が多いです。
更に詳しく言うと、股関節を曲げる動きと骨盤の前傾が乏しいために腰椎への負担が増大してしまいます。
椎間板ヘルニア
前屈障害型腰痛の方でただの腰痛か、しっかり検査をした方がいい腰痛かを見極める必要があります。
その中でしっかり検査をした方がいい腰痛の代表として、椎間板ヘルニアがあります。
これは、腰椎と腰椎の間にあるクッション材の役割をしている軟骨状の組織「椎間板」に傷がつき、中心にあるゼリー状の「髄核」が飛び出して、背中側にある「神経」に炎症などを引き起こし、痛みを生じさせます。
好発年齢は20~40代の若い世代に多く、一般に椎間板ヘルニアの症状は「腰痛」から始まり、その後臀部から下肢にかけて痛み、しびれが出現してきます。特徴としては、「前かがみの姿勢」になると腰の痛みと脚のしびれが強くなるのが大きな特徴です。
そのため、腰痛のみではなくお尻や脚、足の指先などにしびれを感じることがあれば自己判断せずに医療機関を受診することをおすすめします。
今後の対策・予防法について
椎間板ヘルニアなどの緊急性を要する腰痛(特異的腰痛)は、セルフでの運動などよりは、まず医療機関での治療が先です。
ここでは、そのような症状がない方への腰痛対策、予防法についてお伝えします。
前屈障害型腰痛の方に対してはまず、太ももの後ろ、お尻の筋肉のストレッチをおすすめします。
太ももの後ろの筋肉について
太ももの後ろには、ハムストリングスと言う大きな筋肉が付着しています。この筋肉は大きな筋肉であり、普段から代償的に使いやすく硬くなりやすい性質があります。ここでは、ハムストリングスのケア方法を中心にお伝えしていきます。
ハムストリングス
太ももの後ろには、ハムストリングスと言う筋肉があります。これは、膝を曲げたり、骨盤周囲を安定させる作用があります。しかし、この筋肉が硬くなることで、骨盤の前傾を制限し前屈時に邪魔をしてしまいます。
ジャックナイフストレッチ
- アキレス腱を包み込むようにして、両方の足首を両手でつかみます。
- 両方の足首をつかんだまま、膝をゆっくりと伸ばしていきます。
- 胸と太ももはつけたまま、出来るところまで膝を伸ばし、5秒間キープします。
※胸と太ももが離れてしまうと、十分にハムストリングスがストレッチされません。
足上げストレッチ
(仰向けで行います)
- 股関節と膝関節が直角になるように片足を上げ、太ももの裏側を両手でつかみます。
- 太ももの位置を固定し、膝を伸ばして、膝下を上げていきましょう。
- 膝を伸ばし、膝下をできるだけ上げその状態を5秒キープしましょう。
腓腹筋
ふくらはぎの位置にある筋肉を腓腹筋と言います。腓腹筋は内側と外側に分かれていて、特に内側の腓腹筋とハムストリングスは重なるような位置関係にあります。そのため、腓腹筋が硬いと重なっているハムストリングスにも影響があり、結果的にハムストリングスの硬さに繋がってしまいます。そのため、腓腹筋の柔軟性をキープすることも重要です。
腓腹筋のストレッチ
- 壁の前に立ち、右足を前、左足を後ろに開いて立つ。
- 両手は肩の高さで壁につき、両方のつま先は壁に向ける
- 背中をまっすぐにしたまま身体を前に倒す。
- 左足は踵がしっかり地面につくようにして膝は伸ばす。
- 左のふくらはぎにストレッチを感じたら20秒保持する。
お尻の筋肉について
お尻の筋肉は大小さまざまな筋肉が付着していて、インナーマッスルとアウターマッスルがお互いにバランスをとりながら働いています。しかし、長時間の座り仕事や、介護などの重労働でそのバランスの均衡が崩れてしまい、股関節の動きを制限してしまうことがあります。ここでは、アウターマッスルである大殿筋のケア方法をお伝えしていきます。
大殿筋
お尻の筋肉を大殿筋と言います。大殿筋の作用は、股関節を後ろへ伸ばす動きであり、この大殿筋が硬いと骨盤の前傾方向への動きを妨げてしまいます。
また、大殿筋が硬いことによって股関節をスムーズに曲げることも妨げてしまいます。そのため、大殿筋の柔軟性をキープすることは重要です。
膝抱えストレッチ
- 仰向けの状態から、ゆっくりと片方の膝をお腹に近づけます。この時、膝を両手で抱えながらお腹に近づけます。
- 膝を抱え込んだ姿勢のまま20秒間キープします。この時、反対側の脚が曲がっていないか注意してください。
- 反対側もストレッチします。
大殿筋ストレッチ
- 仰向けに寝て左足首を右脚の太ももにのせます。
- その状態のまま右太ももを両手で抱えて持ちます。
- ゆっくりと息を吐きながら右の太ももを身体へ引き寄せます。
- 引き寄せた状態で20秒間キープします。
- 反対側もストレッチします。
お尻まわりのストレッチ
- 床の上にあぐらをかいた状態で座ります。
- 左膝を抱きかかけて右肩に近づけます。この時、坐骨が浮かないように気を付けます。
- 抱えた膝は斜め上へ引き上げるように持ち上げます。
- この状態を30秒間キープします。
- 反対側もストレッチします。
おわりに
・腰痛の種類として、前屈障害型腰痛と後屈障害型腰痛があります。
・前屈障害型腰痛の方は、多くは働き盛りの年代であり、仕事における姿勢が腰痛に関わっていることが多く、デスクワーカー、運転手、看護師、介護士などの大半がこのタイプの腰痛を経験しています。
・前屈障害型腰痛の場合は、腰椎椎間板ヘルニアなどとの鑑別が重要となります。
・前屈障害型腰痛の場合は、腰椎骨盤リズムが破綻しており股関節の可動域制限を腰椎で代償している場合があります。
・前屈時に必要な要素として、骨盤の前傾と後方移動があります。
・セルフストレッチの方法として、ハムストリングス、腓腹筋、大殿筋のストレッチがおすすめです。
腰痛の程度が強い場合や対策の体操を行っても症状が改善しない場合は、自己判断せずに整形外科などの医療機関を受診することをおすすめ致します。
(参考文献)
日本腰痛会誌 前屈および後屈障害型腰痛における運動療法の効果
腰痛のセルフチェック。原因や症状、対処法・治療の注意点 NHK健康Ch