ADHDの方が就職する際の注意点とは?自分の特性をしっかり理解しよう!
近年、発達障害という見た目では障がいがあると分かりにくいけれども、情緒・社会性・コミュニケーション面などで困難さが見られる子どもたちが増加しています。
その発達障害の代表的な疾患にADHDという不注意・衝動・多動性の障がいが見られる疾患があります。
ADHDは発達障害の中でも数が多い疾患ですが、実は子どもの頃だけの疾患ではなく大人になってからも不注意型のADHDの方が社会生活の中で困難さを抱えてしまうことがあります。
特にADHDの方は就職する際や就職しても実際の仕事の中で困難さを抱えてしまうことが多い傾向があります。
そこで今回はADHDの方が就職の際に注意しなければならないことをその特性を交えながら考えていきたいと思います。
大人のADHDの特徴とは?
ADHDは子どもの頃からみられ大人になっても生涯継続されていく疾患ですが、子どもの頃と大人の頃のADHDの特徴は少し違いがあります。
ADHDの特性にはいくつかタイプがあり、大きく分けて不注意型と多動・衝動性型、そして不注意型と多動・衝動性型の両方の特徴が見られるタイプの3つに分けられます。
不注意型の特徴は、注意が逸れやすく不注意が続くことで日常生活に困難さを抱えてしまうという特徴があります。
多動・衝動型の特徴は、じっとしていることが難しく衝動的に気持ちのままに動いてしまうという特徴があります。
不注意型と多動・衝動性型の2つの特徴が見られるタイプは、その両方の特徴が日常生活において顕在化していることが特徴です。
子どもの頃はこの3つのタイプが全て見られることが多いのですが、大人になると多動・衝動性型は症状が落ち着く場合が多く、不注意型の症状が目立ってきます。
また、不注意型は多動・衝動性型と比べて子どもの頃からその症状が分かりにくいため、そのまま何も治療が行われず大人になってしまうケースもあります。
このように大人のADHDは、注意が逸れやすく不注意であることが社会生活において困難さにつながってしまう不注意型のタイプが多いという特徴があります。
なぜ就職する際に困難さを抱えてしまうのか?
このように大人のADHDは不注意型であることがほとんどですが、当然ながら就職して仕事をするとなると自分の思い通りに仕事を行うことができる場合ばかりではありません。
不注意型の特徴として以下のような症状があります。
細かな部分に注意を向けられず、不注意なミスを何度も繰り返してしまう
ADHDの方は、自分で気をつけているつもりでも細かな部分に目が行き届かない場合が多いです。
そのため、一度見落とした部分を再度同じように見落としてしまうことが多く、いつまで経っても同じミスを繰り返してしまいます。
人と話していてもどこか上の空に見える
これも一つのことに注意を向けることが難しいことと関連しており、一人の人とじっくり話をすることも難しい場合があります。
特に周囲の環境が集中できない環境であった場合はなおさら注意が他の部分に向いてしまい、うまくコミュニケーションを図ることが困難になります。
時間内に仕事や作業を終えることができない
注意が逸れやすい環境では、一つの作業や仕事に集中することが困難になってしまいがちです。
そのため、他の人よりも仕事や作業に時間がかかってしまい、最後までやり遂げることが難しくなります。
スケジュール管理ができない
これも注意が持続しないことと関連しており、1日のスケジュールを自分の中で時間の流れに沿ってこなすことが苦手です。
そのため会議の予定や仕事の管理がうまくできず、周囲とトラブルになってしまうことも多いです。
仕事の内容を筋道を立てて考えながら行うことが苦手
ADHDの方は仕事の内容は理解していても、その内容をどのように順序立ててこなしていけばよいのか分からないことがあります。
そのため、職場の理解が得られにくいと仕事ができない人と誤解をうけることがあります。
自分の特性を理解して就職活動を行おう!
ADHDの方が就職する際には、企業によってはかなりの困難さを抱えてしまうリスクがあります。
そのため、ADHDの方が自分に合わない職業や企業に就職することは社会生活が成り立たない場合があるのであまりオススメできません。
社会生活が困難になってしまわないようにするためにも、まずは自分の特性を理解することが重要です。
大人のADHDの場合はほとんどが不注意型ですが、中には多動・衝動型の方もいらっしゃいます。
自分がどのタイプのADHDなのかしっかり自己分析を行うようにしましょう。
また、ADHDだからといって短所ばかりではなく、長所も多くあります。
以下にADHDの方の長所について簡単にまとめていきます。
- 好奇心旺盛でチャレンジ精神がある
- 周囲の環境の変化に敏感であり、気づきにくいところも気づくことができる
- 行動力があり、失敗を恐れない
- 興味があることには集中することができる
- 独創性があり発想が豊かである
このようにADHDの方は感覚面で優れている部分が多く、自分の特性を理解してもらえば企画立案などの部分で力を発揮しやすくなります。
特に独創性や発想が豊かなので、得意な分野を任せて苦手な部分をフォローする体制が構築できればADHDであっても就職することは可能です。
自分の特性を理解するということは短所ばかりだけではなく、得意な部分は何か理解することも必要です。
実際に就職する際の注意点とは?
では、就職する際にはどのようなことに注意しなければならないのかまとめていきます。
障害者枠を利用して企業に就職する
これはつまり自分がADHDであるということを企業にあらかじめ伝えることで、ADHDという障がいに配慮してもらうということです。
ADHDであれば就職する際に就労移行支援を専門の事業所などでうけることができるので、業務内容を配慮してもらったり、得意な分野に配置してもらったりといった支援を受けられます。
ただ、障害者枠を全ての企業が設けているわけではないので、就職先が限られた企業になってしまったり、給与が低くなってしまったりといったデメリットがあります。
そのため、ADHDの症状が軽度であれば障害者枠を利用しないで一般枠で就職したほうが良い場合もあります。
その場合は、業務内容の配慮をうけることは難しく周囲の理解を得ることも難しくなります。
仕事内容にゆとりがあるかどうか
一概に全ての企業選びにおいて言えることでありませんが、大企業に就職して給与水準が高くても仕事内容が難しく忙しすぎる企業はADHDの方には向かないかもしれません。
スケジュールを詰め込みすぎるとストレスを抱え込んでしまい、他の精神疾患にかかるリスクも増します。
就職する前に新人研修が充実しているかどうかということや、企業訪問を事前に行いどういった業務内容があるのかを把握するなど、自分がどの程度まで仕事をこなすことができるのかを理解して就職活動を行うようにしましょう。
まとめ
大人のADHDの方は主に不注意型の方がほとんどですが、就職する際にどのようなことをしたいのかということや、何ができるのかということを自分なりに把握してから企業選びを行うことが重要です。
また、就職してから実はADHDが発覚したという場合もあり、一概にどのような企業に就職すれば良いのかを考えることは個人差があるので難しい部分があります。
どちらにせよADHDの方が就職して働くために大切なことは、自分がADHDであることを理解し、その中でもどのようなタイプなのかをしっかり把握することです。
そうすれば自分の長所と短所がはっきりとしてくるので、自ずとどのような働き方をすれば良いのか見つかるのではないかと思います。
(参考文献 )
こうすればうまくいく 発達障害のペアレントトレーニング実践マニュアル