ADHDの方におすすめ!部屋のレイアウトの仕方について
ADHDの方はその特性である不注意・衝動性・多動性の症状により、片付けをすることが苦手であるということはよく知られるようになってきました。
しかし、ADHDだからといって部屋が片付かないわけではありませんし、ずっと散らかったままの部屋に住んでいると社会生活に支障が出るようになるだけではなく、衛生的にも悪影響が出てしまいます。
ただ、だからといってADHDの方はどのような部屋のレイアウトにすればよいのか考えることは簡単なことではありません。
そこで今回はADHDの方にオススメの部屋のレイアウトの仕方について考えていきたいと思います。
そもそもなぜ部屋が散らかってしまうのか?
ADHDの方の特性の一つに「物事を順序立てて考えることが苦手」という特性があります。
部屋を片付けたり掃除したりすることも、実は物事を順序立てて考えながら行わなければならない作業なので、ADHDの方は掃除や片づけをすることが苦手であり部屋が散らかってしまいやすくなります。
また、ADHDの方は部屋の掃除や片づけをしてきれいにすることを面倒くさいと考えている方が多いのも特徴です。
なぜ面倒くさいと考えてしまうのか、これには掃除に対する考え方がそもそも違う場合が考えられます。
一般的に掃除をするということは、掃除をする前に片付けをしなければなりません。
つまり、「部屋の片付け」をしてから「部屋を掃除」することが効率の良い作業であり、部屋をきれいに保つ方法となります。
ということは、「掃除」をするときにはすでに部屋はそもそも散らかっていないはずなので、普段掃除をするだけならそこまで面倒な作業にはなりにくいということが考えられます。
しかし、ADHDの方は片付けをすることがそもそも苦手なので、上記のようにまず「部屋の片付け」をしてから「部屋の掃除」をしなければなりません。
そのため、掃除を面倒くさいと考えてしまうのではないかと考えられます。
では部屋が散らからないようにするためにはどうすればよいのかというと、物を出して使った後に戻す作業(つまり片付け)をしなければなりません。
ADHDの方は、この物を出して使うまでは一緒ですが、その後の「戻す」という作業が困難になってしまいます。
だから物を出して使ってそのままという過程が繰り返されることで、部屋が散らかってしまうというわけです。
散らかりにくくするには部屋のレイアウトを考えよう!
ADHDの方は、周囲の環境によって注意のそれ方が随分変わります。
そのため、散らかりにくい部屋にするためには環境を整えることがとても重要です。
以下に部屋のレイアウトの仕方についてまとめていきたいと思います。
できるだけ狭い部屋でコンパクトな間取りを選ぶ
広くて何部屋もあり仕切りごとにドアがあるような部屋や家は、ADHDの方にとってはかなり掃除や片づけの難易度が上がってしまいます。
また、部屋が広かったり家が大きかったりするとその分物も大量に増えてしまいます。
そのため、できるだけコンパクトな部屋やシンプルな間取りの部屋を選ぶことが重要です。
生活の導線上に物を配置する
生活の導線上に物を配置することは、片付けや掃除を行いやすくするための基本であり最も大事なことです。
ADHDの方が物を片付けられない背景にどこに物を戻せばよいのかわからないということと、物を戻す場所が遠くて収納場所がバラバラであるということがあります。
例えば、ドライヤーなどは一般的には洗面台のところにしまっている場合がほとんどだと思いますが、健常者の方はたとえ他の場所に持っていってもまた同じ場所に収納することができます。
しかし、ADHDの方はテレビを見ながら髪を乾かしたりしたくなったとした場合、そのままリビングにドライヤーを置き放しにしてしまうということがあります。
そうならないために、髪を乾かすときは洗面台で必ず行うようにして、洗面台のところにかごを置いてそこにドライヤーを収納するようにすると、リビングにドライヤーを置きっぱなしになることはなくなります。
また、生活動作を考えながら物を配置するとより散らかりにくくなります。
例えば台所の周囲は、料理全般に使用する物以外は置かないようにします。
ラックに調味料全般を置き、調理器具は調理棚、食器は食器棚などといった配置を行い
台所では料理のみをするようにすると余計なものがあふれることはなくなります。
同じようにベッド周囲は寝具関係のみ、お風呂はお風呂用品のみ、トイレもトイレ用品のみといったように場所と物を関連付けて配置するようにすると散らかることがなくなってくるはずです。
また、リビングには物を極力置かないことをオススメします。
リビングはほとんどの人がくつろぐ場所であると思いますが、くつろぐ場所であるからこそADHDの方にとっては物があふれやすい場所です。
リビングは場所と物を関連付けることが難しく、何を置いていいのか分かりにくい場所です。
逆に言うと何も置かないようにすることも可能であり、片付けが苦手なADHDの方は極力物を置かないようにし、何も行う必要がない場所と認識することでゆっくりとくつろぐことが可能になりやすいと思います。
こたつや布団など床に置いて生活に使用するものも置かないようにする
床に物を置かないようにすることは、ADHDの方にとって片付けが行いやすくなる一つの手段です。
床に物が置いていなければ、そもそも片付いている状態なので掃除機をかけるなどの掃除も格段に行いやすくなります。
また、カーペットはまだ良いですが、こたつや布団などの生活用品は使用しないほうが片付けや掃除が行いやすくなります。
ADHDの方は、例えば布団を使用するといちいち掃除のたびに上げ下ろしをしなければならなくなりますし、こたつもこたつ布団を上げたり下ろしたりしなければならなくなります。
そのような一手間かかる作業が要求される生活用品を床に置いて使用することは、片付けや掃除が苦手なADHDの方にとっては負担になりやすい環境設定となってしまいます。
収納するかごやラックを生活動線に配置する
棚に収納することが面倒な方は、生活動線に大きめのかごやラックを置くようにすると良いです。
かごやラックに小さめの小物などを入れておくようにすることで、床に物が散らかることが少なくなります。
なんでもかんでも入れてしまうのは見た目がよくありませんが、特に床に散らばりやすい小物類はかごやラックがあると便利です。
棚やラックに何を入れる場所か明記したり、写真を貼ったりする
ADHDの方によっては言語での理解が分かりやすかったり、映像で見たほうが分かりやすかったりする場合があります。
どこに物をしまえば良いのかわからなくなる場合がある方は、自分の特性により理解しやすい方法があると思いますのでラベルを付けたり、写真を貼ったりするなどの工夫を行うと収納する場所が分かりやすくなります。
ただ、生活を行う場所と物の関連性があるようにしなければ、最終的にどのように片付けを行えばよいのか混乱する恐れがあるので、しっかり収納する場所と物の関連があるかどうかを確認するようにしましょう。
まとめ
ADHDの方が部屋を片付けることが苦手な背景に、部屋のレイアウト(環境)により注意が逸れやすいことが大きな原因の一つとして考えられます。
部屋に物があふれている状態では、忘れ物が増えてしまったり物をなくしてしまったりなどの社会生活への影響もありますし、掃除が十分にできないなどの衛生的な問題も顕在化してきます。
しかし、少し部屋の配置を工夫したり収納の位置をわかりやすくしたりすることで、ほとんどのADHDの方がスムーズに片付けや掃除を行うことができるようになります。
掃除をする前にまず床に物を置かないようにするなどの片付けの工夫を行うようにして、物が部屋に散らからないようにしましょう。
使ったものを戻すという一連の片付け作業を日々の習慣にすることができれば、社会生活もより良いものにしていくことができるはずです。
(参考文献 )
こうすればうまくいく 発達障害のペアレントトレーニング実践マニュアル
読んで学べるADHDのペアレントトレーニング