肩の症状

自分でできる!五十肩・六十肩と呼ばれる「肩関節周囲炎」の対処法と予防法

自分でできる!五十肩・六十肩と呼ばれる「肩関節周囲炎」の対処法と予防法

中高年の方なら誰もが一度は経験すると言っても過言ではない「五十肩・六十肩」ですが、痛みや日常生活に支障をきたす程度、治るまでの経過や期間など、その人によってまちまちです。

周りの人に経験談を聞いても人によって意見が違いすぎて何が本当なのか、また、実際になってしまったときにどうすればよいのかということは分からない方が多いかと思います。

そこで、今回は「五十肩・六十肩」について状態や原因、対処法などを詳しく説明していきます。

「五十肩・六十肩」ってなに?

「五十肩・六十肩」という言葉をよく耳にしますが、そもそも「五十肩・六十肩」ってなんなのでしょうか?

単刀直入にいうと「五十肩・六十肩」は「肩関節周囲炎」のことをさします。

「肩関節周囲炎」とはその名前の通り、腕の付け根である肩関節の周りに炎症が起きることを言い、「肩関節の周り」に含まれるものとしては関節・関節軟骨・靭帯・筋肉があります。

これらのなんらかの組織が炎症を起こして痛みがでたり、動きが悪くなったり、力が入りにくかったりします。

また、よく「五十肩と六十肩って何が違うの?」という質問を受けますが、答えは「なった方の年齢が何歳かということであてはめて言っているだけで内容は同じ」です。

五十肩・六十肩の原因は?

それでは、なぜ中高年になると肩関節周囲炎になりやすくなるのでしょうか?

筋力や柔軟性の低下

中高年になってくると、特に筋力トレーニングや筋力を使う仕事や趣味をされていない限り徐々に筋力が低下してきます。また、年齢とともに筋肉や靭帯の柔軟性も低下してきます。

自分では特に変化を感じないため、今までやっていた動作をいつもと同じように行ってしまいますが、筋力が低下していると筋肉や関節にかかる負担は今までよりも大きくなってきますし、柔軟性が低下した状態では少し腕を捻ったり伸ばしたりしただけで筋肉や靭帯を痛めてしまうこともあります。

このような日頃のちょっとしたことの繰り返しが、肩関節周囲炎の原因となってしまいます。

新陳代謝の低下

年齢とともに新陳代謝が低下します。

子供のころは擦り傷ができても、かさぶたができて皮膚が再生するのに数日しかかかりませんが、大人になるとかなりの時間を要します。

それと同じで、筋肉や靭帯の再生も年齢とともに時間がかかるようになります。

痛みを感じないほどの筋肉や靭帯の微細な損傷は日々起こっていますが、それらの細胞が治るのに時間がかかり、治らないうちに次の損傷を引き起こし、その繰り返しによって炎症が大きくなってしまい、肩関節周囲炎につながってしまうのです。

「肩関節周囲炎」の経過

肩関節周囲炎には一般的な経過があります。

炎症の程度や個々の体質によっても経過には差がありますが、「五十肩・六十肩」になったらおよそこのような経過を辿ると思ってみてください。

炎症期

とにかく炎症による痛みが先行する時期です。

動かしたり重たい物を持った時の鋭い痛みをはじめ、安静にしていてもうずくような痛みがあったり、寝ているときに目が覚めてしまうような夜間時痛がある場合もあります。

炎症が先行しているこの時期は、無理をして動かしてしまうと炎症がひどくなり、痛みも増してしまいます。

凍結期

「炎症期」が終わると、「凍結期」に入ります。

この時期は、主に可動域制限が強くなる時期で、痛みは落ち着いてきていてもどんどん肩関節の動きが悪くなってきます。

不安になって、無理に動かそうとする方もいますが、無理に動かすと強い痛みを生じたり、落ち着いてきている炎症を再燃させてしまいます。

解凍期

「凍結期」が過ぎると「解凍期」になってきます。

徐々に関節や周囲の筋肉の緊張が和らぎ、動きが回復してきます。

ただし、勝手に元のように動くようになるわけではなく、この時期をうまく過ごさなければずっと可動域制限が残ってしまう場合がありますので、放っておいてよいというわけではありません。

五十肩・六十肩の対処法と予防法

肩関節周囲炎になってしまったときに必要な対処法は、前に述べた期によって異なります。

対処法を間違えてしまうと状態を悪化させてしまうこともありますので、ご自身がどの期にあてはまるのか正確に判断することが必要です。

ここでは、炎症期~解凍期それぞれの対処法をご紹介していきます。

またなってしまう前の予防法についてもご紹介いたしますので、是非参考にしてみてください。

炎症期

炎症期は、とにかく痛みが強いため、その痛みを抑えることが重要です。

 安静

炎症を落ち着かせるために一番大切なことは安静を保つことです。

全く動かさないというのは難しいかもしれませんが、基本的に痛みがでる動作は禁止です。腕を下ろしているだけでも腕の重さを支えるために筋肉を使いますし、関節にも牽引力が働きますので、それだけでも痛みのある場合は三角巾で吊っておくのも一つの方法です。

また、就寝時に身体の横に下ろすと痛い場合は肩の下に枕を入れるなどしてなるべく痛みのない肢位をとるようにしましょう。

アイシング

冷やすと痛みが増すと思われている方もおられるようですが、炎症の強いときはアイシング(冷却)も効果的です。

氷嚢を作り、服の中に入れて肩関節を包むようにします。

皮膚が冷えて痛みがある場合もありますが、できれば皮膚の感覚がなくなるくらいまで15~20分ほど冷やしてください。

終わったら一度外し、皮膚の感覚と温度が元にもどったら再び冷やしていただいて構いません。

腕を使ったあとやお風呂上りなど、一日数回は冷やしていただくとよいかと思います。

凍結期

凍結期は炎症による痛みが落ち着いてくるにもかかわらず可動域制限が顕著になり、動かなくなってくる時期です。

落ち着いてきた炎症を再燃させないように気をつけつつも、これ以上可動域制限がひどくならないようにしていくことが大切です。

温熱療法とアイシング

炎症期は温めることで炎症を悪化させてしまうので温めることはおすすめできませんが、炎症が落ち着いてきた凍結期はかたくなった肩関節をほぐすために、関節を温めて血流をよくしたり組織を柔らかくすることも必要です。

心地よい温かさのお風呂に肩までつかったり、ホットパックで肩を温めるなどしてみると、その後は少し動かしやすくなるかと思います。

また、凍結期といえども炎症が全くなくなったわけではありません。

日常生活内で肩を動かすうちには痛みを伴ってしまうようなことがあるかと思いますので、特にたくさん動かしたあとは炎症期と同じアイシングを行うことも大切です。

適度な運動

凍結期だからとあきらめて肩関節を動かさないでいると、どんどんかたくなってしまいます。

可動域制限内から制限ぎりぎりのところでなるべく痛みを伴わないように動かすようにしましょう。

肘を曲げた状態で肩甲骨を動かすように意識しながら肩関節を回したり、軽く前屈した状態で腕を前にぶら下げ、脱力してぶらぶらと前後に揺らしてみたり(コッドマン体操)してみてください。

解凍期

凍結期を超えると徐々に動きがよくなってきます。

痛みもかなり落ち着いてきて、無理な肢位をしないかぎりは痛くないといった状態になってくる方もおられます。

基本的に行うことは凍結期と同じですが、凍結期よりも多少の負荷がかけられるようになっているので、いっぱいまでバンザイをしたところから反対の手で腕をもちながら少し引っ張ってみるなど積極的に可動域を拡げるように動かしていきます。

予防法

ここまでの内容を読んでいただくと、五十肩・六十肩になると治るまでに時間もかかってやっかいだということに気づいていただけたかと思います。

ですから、日頃から予防を行うことが大切です。

ここからは、肩関節周囲炎にならないための予防法をお伝えします。

ストレッチを行う

肩関節周囲炎の原因として柔軟性の低下ということをあげましたので、それを予防するために行うのがストレッチです。

朝の準備運動として作業を始める前や一日使った肩をケアするという意味で夜寝る前などに少しずつでいいので行う習慣をつけましょう。

筋力を維持する

筋力の低下も肩関節周囲炎の原因になりますので、ある程度の筋力を維持することも大切です。

分かりやすいものでは腕立て伏せやダンベルトレーニング、ほかには肩のインナーマッスルを鍛えるためのチューブトレーニングもおすすめです。

自分はいつも重労働しているから大丈夫だろうと思っている方も、実は肩の中でもいつも決まった筋肉ばかりを使っていることが多く、バランスよく使えている方ばかりではないので一通りの筋トレをするということも大切です。

肩甲骨を動かす

肩甲骨の動きが弱くなっている方は非常に多いです。

肩の動きは腕の付け根である肩関節の動きと肩甲骨の動きが合わさって作られているので、肩甲骨の動きが悪くなっている方は付け根の肩関節ばかりに負担が集中してしまい、その結果炎症を起こしやすくなってしまいます。

胸を張ったり、猫背姿勢にすることを繰り返して肩甲骨を動かす体操をしたり、腕を回しながら肩甲骨を回す意識をすることでかなり改善されます。

正しい姿勢をとる

猫背姿勢になり、肩甲骨が背中の外側に流れてしまっている方がとても多くおられます。

胸を張った正しい姿勢で肩甲骨が正しい位置にないと、肩関節周囲の筋肉は力が入りにくい状態になり、効率よく筋肉を使うことができません。

また、バンザイをするときでも猫背姿勢になっていると肩関節に無理な負担がかかります。

ですから、日頃から正しい姿勢でいることを意識することで、肩関節の負担を減らすことになります。

おわりに

今回は五十肩・六十肩と呼ばれる肩関節周囲炎についてその症状や原因、対処法と予防法についてまとめてみました。

全てを実践することは難しいかもしれませんが、対処、予防ともにご自分でできるところから一つずつ始めていただきたいと思います。

また、この内容を参考にやってみても症状が改善しなかったり、疑問や不安があるときには早めに整形外科を受診し、状態をチェックしてもらったり、リハビリ指導をしてもらうようにしてください。

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